そして、ほとんどのアメリカ人はそんな高額の現金を財布に入れていません。中流以上の人は、支払い額が10ドルを超えたら当たり前のようにクレジットカードで決済します。クレジッドカードがつくれない人の場合でも、デビットカードや小切手で支払います。逆に日本人観光客がスーパーなどで100ドル札を取り出すと、「ニセ札じゃないか」と疑われて、お札をじっくり調べられるほどです。

「紙幣は匿名通貨」
アメリカで流通しない高額紙幣

 さて、なぜアメリカで高額紙幣が流通しないのでしょうか。クレジットカードや小切手が便利だからというのも1つの理由ですが、もう1つ重要なことは「紙幣は匿名通貨だ」ということです。つまり、それがきちんとした仕事で手に入れたお金なのか、犯罪で手に入れたお金なのか、紙幣だと区別がつきません。

 アメリカでは、マネーロンダリングへの追及や処罰が非常に厳しいです。同じように匿名性を持った仮想通貨が出現したときは、日本のように大らかに受け入れるのではなく、その匿名性をどう消していこうかと本気で考えて取り組んだわけです。

 そもそも高額紙幣が存在しなければ、多額のマネーロンダリングや不正取引は行うことができなくなります。その観点からも、1万円程度の高額紙幣を世界からなくしていこうという一定の必要性が、今現在、存在しているのです。

 ちなみに「そうは言っても、1万円札が存在しない世界など想像できないよ」と言う日本人のために言っておくと、株券の世界でまったく同じことが以前、言われていました。

 大企業の株券というのは、以前は紙でできていて、かつ匿名性が担保されていました。譲り受けた株券を、前の持ち主の名義のまま金庫に隠しておいて、ある日それを証券会社に持ち込んで名義変更をすれば、その人は正当な株主として認定してもらえました。これが以前の株のルールでした。