「戦略的対峙」が続く
異なる体制の覇権争い

 米中の貿易戦争は遅かれ早かれ一定の合意を生むのだろうが、米中の戦略的対峙が収まるとは想定できない。

 トランプ氏の取引(ディール)のアプローチは結果を生まないと意味がない。中国に圧力をかけ続け、十分な成果を国内に示すことが目的なので、中国側の米国産品の買い付けや市場開放措置で合意は達成されるだろう。

 また中国にとっては、貿易問題で米国と正面衝突すれば経済成長の一層の鈍化要因となり、現時点では、失うものが圧倒的に大きい。

 したがって、米中間では貿易戦争収束に向けたなんらかの合意がされるだろう。

 ただ、中国の時間軸は米国よりうんと長い。一方、膨大な貿易赤字の要因は、米国の旺盛な消費需要と貯蓄の少なさというマクロ要因なので、米中の貿易不均衡が是正されていくと考えるのは早計だ。

 従って今回、なんらかの合意が達成されても、中長期的には貿易摩擦は続いていくし、特にファーウェイ問題に象徴されるハイテクの争いは尖鋭化していく。

 個人が基本の自由主義経済体制と、共産党の支配が基本の国家資本主義体制の覇権をめぐる争いだからだ。

 貿易問題で一定の合意ができても、中国の経済的成長の速さは、軍事能力の急速な拡大につながっており、南シナ海の埋め立てによる軍事化の速度も速い。台湾に対しても締め付けを強めている。

 中国は米国との長期的な対立を想定して、精力的に米国以外への全方位外交を展開しており、日本との関係改善をはじめ「一帯一路」構想を活用しての東南アジア諸国や中東・アフリカ諸国との関係の緊密化、欧州の切り崩しに余念がない。
   
 欧州の南部諸国や東欧諸国への投資を通じる関係強化は目覚ましく、習近平主席のイタリア訪問ではG7で初めて「一帯一路」に関する覚書の署名にこぎつけた。