こうした与件が正しいとすれば、日本外交の戦略的目的をどう設定するのか。

 残念ながら、もはや日米同盟一辺倒の時代ではない。日本の安全と繁栄を担保するため近隣諸国との総合的な関係の中で、大きな絵を描かねばなるまい。

 基本にあるのは米国を健全な形で巻き込み、中国が行動を抑制するよう仕向けていく戦略だ。

 強大化していく中国を安全保障面で抑止していくためには、どうしても米国の力が必要になる。「米国第一」の色彩を強める米国との同盟関係を強化するためには、日本は自身の能力を高め、効率的な自衛力を維持していかねばなるまい。
 
 同時に韓国、ASEAN、豪州、インドなど、地域における中国の覇権を望まないという点で、戦略的価値を日本と共有している諸国との共同演習を含む安全保障協力を恒常的な形で進めていく必要がある。

 しかし安全保障面での牽制(ヘッジング)政策は、中国に関与する(エンゲージメント)政策とのバランスを保つ必要がある。

 貿易や投資に関して、中国に、国際社会のルールを順守させ、途上国のインフラ建設協力などのプロジェクトについても、より高い規範に従った事業を実現していく必要がある。

 このためには、「TPP11」に東アジアの多くの国に参加してもらうとともに、アジアの自由貿易協定であるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を早急に締結する必要がある。

 日本は「一帯一路」やAIIB(アジアインフラ投資銀行)に直接参加する必要はないが、共同プロジェクトなどの方式で積極的に協力していくべきなのだろう。

 同時に東アジア地域の信頼を醸成する枠組みも構築しなければならない。

 北朝鮮の「非核化」が軌道に乗れば、6者協議の枠組みは、非核化だけでなくテロ防止や難民対処、海上の安全、事故の共助などを含む信頼醸成の枠組みとなり得るだろう。