地熱発電で温泉が
枯れた例はゼロ

 これまで地熱発電が普及しなかった原因である発電コスト、国立公園の問題は解決に向かっている。だが、最後にもうひとつ、温泉地での地熱発電問題が残っている。具体的に言えば、「温泉地周辺で地熱発電所が建設されると、温泉が枯れてしまうのではないか」といった理由で、反対運動が起こるケースだ。

 ただ日本の場合、温泉が枯れる心配はない。現実に日本の地熱発電所の歴史は50年を超えるが、温泉が枯れた例はないと、江原氏は言う。

「地熱発電は、地表から1~3kmにある地熱貯留層から熱を取り出します。一方、温泉は地表から100~200mの温泉帯水層という所から、温まった地下水を採取します。構造としては、温泉帯水層の下に地熱貯留層があり、その間には“キャップロック”という水を通しにくいふたの役割を果たす岩石があるので、地熱貯留層から熱を取っても温泉帯水層には直接影響しません。また、そのキャップロックが部分的に破れている場合でも、地熱貯留層から取った熱水を地下に戻して再利用するシステム(取り出される水の量と補給される水の量のバランスが取れている)が開発されているので問題はありません」

 江原氏によると、日本が地熱発電を始めて50年以上がたっているものの、温泉に悪影響を与えた例は1つもなく、むしろ近隣で温泉を掘り合うことの影響の方が大きいのだという。なぜなら、答えは単純で、温泉は同じ温泉帯水層から熱水を取り出しているからだ。

 とはいえ、温泉事業者にこうした話をしても、最終的には了承を得られないことがまだ多く、どのように理解してもらうかはなかなかに難しいようだ。

 国は、2030年度までに地熱発電で、現在の3倍にあたる150万kWを発電することを目標としており、すでに全国100ヵ所ほどで調査・発電所建設が始まっている。大規模な地熱発電(万kW級)は発電設備をつくるための調査や開発に少なくとも10年はかかってしまうが、それでもこの5月中には、秋田県湯沢市山葵沢(わさびざわ)に4万2000kWの地熱発電所が稼働することが決まっている。

 徐々にではあるが、地熱発電所を推進していくための土壌はでき始めている。将来、地熱発電のシェアが増えていくのは間違いないだろう。