辞めるのも権利
有休を消化するのも権利

「ブラック企業だと自覚した場合、中から職場を改善しようと考えるのは現実的ではありません。さっさと退職して次を考えるほうが前向きです」(住川氏)

 だが、すぐに辞める決心がつけば良いが、職場の洗脳がたくみで、本人は「とても辞められない」と信じているかもしれない。退職の意思を示したとしても、「代わりの人がいない」など、あの手この手で引き留めようと抵抗される。そんなときは、「辞める権利」があることを教えよう。

「ものを売り買いして代金をやりとりする。働くことも基本的には同じで、会社と労働者の間の契約です。条件に違いがあれば、取りやめにする権利がある」。住川弁護士は「あくまでドライに考えるべき」と強調する。

 具体的な手順としては、まず、「退職願」ではなく「退職届」を出す(表2)。会社が受け取りを拒否すれば、そのときは「配達証明付き内容証明郵便」で送付する。これで法的な根拠が発生する。そして、これまでどおり、出勤して仕事を続ける。通例では最低で2週間、長くともひと月で会社を辞めることができる。

 もう会社に行きたくないという気持ちは分かるが、勝手に休むと、それを理由に懲戒解雇されることがある。そこで、次に有給休暇を消化することを伝える。有給休暇の取得も難色を示されるようであれば、内容証明郵便を使って書面で届け出る。