ザハ案の見直し後はゼネコン主体のJVが組まれた。設計事務所はゼネコンが施工図を描きやすいよう、造りやすいよう、デザインを描いた。

 例えば、同じ形のパーツを複数使うことで効率的に部材を調達したり、反復作業を増やして職人の習熟度を上げられるようにして、工期短縮、工事費縮小につなげた。

ヤマ越したため
工事損失見込んだ引当金計上重ねず?

 大成の決算書を見ると、新国立の本体工事に着工した16年12月にかかる16年度第4四半期決算では、工事で損失が発生する可能性を見込んで計上する工事損失引当金が前四半期比で100億円増えている。個別案件の収支は非公開だが、着工時はリスク対策として引当金を計上したと推定できる。

 それ以降は工事損失引当金に目立った増額はない。野村證券の前川健太郎アナリストは、「自助努力もあり採算は悪化しないだろう。損失引当金は一部戻ってきていると考えるが、まだ残っており、このまま順調に工事を進められれば、数十億円単位で損益を改善させるポテンシャルがある」とみる。

 契約した工事費にほぼ収めて収支トントンにするどころか、さらに利益を出す可能性もある。労務費や資材費の高騰によるやむを得ない事情で工事費の支払いを増額するスライド条項で上積みされたり、東京五輪の開会式演出のための追加発注などで利益を積み上げられるかもしれないからだ。

 大成の山内隆司会長は「国の大切なプロジェクトだが、事業なので現場に赤字工事でもよいとは指示していない」と外部に語る。

 慎重な姿勢を保ちつつも、ヤマを越したのだろう。外部の懸念をよそに、当事者たちにとって新国立はもはや問題案件ではなくなっている。