2011年に大学設置基準が改定され、すべての大学がキャリア教育を授業でやることが義務づけられた。そのキャリア教育で行われているのが、「好きなこと探し」「やりたいこと探し」だ。

 私が相手にしている学生たちも、キャリア教育の授業で、「やりたい仕事」を見つけよう、「好きなこと」を仕事につなげようなどと言われ、毎週のように「やりたいこと探し」、「好きなこと探し」をやらされているという。

 いくら探しても、自分が好きなのはサッカーしかないし、やりたいこともサッカーだし、それが仕事に結びつく気がしないという学生もいれば、好きなことで暮らしていける人なんてごく一握りしかいないし、自分はもっと堅実に就職先を探したいという学生もいる。

 このようにキャリア教育の「好きなこと探し」、「やりたいこと探し」に冷めた目を向ける学生もいるものの、多くの学生はそうした教育の影響を受け、必死になって「好きなこと」「やりたいこと」を探し、それを仕事に結びつけようとしている。

 それをもとに就活を行い、採用面接でも、「ウチに就職したら、どんな仕事をしたいですか?」などと尋ねられる。それは企業側も周知のことのはずだ。

 そうした想定問答のために、自分の「やりたい仕事」についてあれこれ考えておかねばならない。こうして「やりたい仕事」へのこだわりが強化されていくわけである。

 ところが、いざその会社に入ってみると、採用面接で答えた「やりたい仕事」とまったく関係ない部署に配属される。そこで、会社から裏切られたような気持ちになるのはいうまでもない。

今の仕事が将来どう生きるのか、
部下に納得できる説明しているか

 かつてのように有無を言わさずに会社の方針だからといって従わせようとしても、イマドキの若者は納得しない。大事なのは、納得させる説明を丁寧に行うことである。ポイントは2つある。

 一つは、いろんな現場を経験することで多面的な視点が養われ、この先「やりたい仕事」をする時に生かせるということをわかりやすく説明しなくてはならないことだ。

 例えば、マーケティングをやりたいという人が、営業に配属されたとしよう。商品の流れや競合する商品などが見えてくるため、そうした営業経験を踏まえることでより有効なマーケティングを考えることができるようになり、マーケティングのプロとして成長していけるだろう。

 経理や財務の仕事をやりたいのに他の部署になってしまった場合も、いろんな部署を経験することで、予算がどのように使われているのか、どのように必要とされているのかという現場の切実感がわかるようになり、より合理的な判断ができるようになるはずだ。

 このように、今後やりたい仕事をする際に、今の仕事がどのように役に立つかを説明することが大切である。

 Dさんのように「もう、我慢できません」というのは、言ってみれば感情反応だ。感情は認知によってコントロールできる。それが認知行動療法の基本である。それを応用し、わかりやすく説明すれば、感情反応を和らげることができる。

「今携わっている作業は何のために行っているのか」という意味づけを理解すれば、「もう、我慢できません」といった不満は解消される。