経営再建中のウィルコムが快進撃を続けている。スマートフォン全盛時代に、あえて逆張りの戦略を採って成功しているのだ。

 ウィルコムは2010年2月に会社更生法の適用を申請、12月にソフトバンクが全株式を取得して再建を進めてきた。

 2011年1月から17ヵ月連続で新規契約者数が解約者数を上回る状況で、現在の契約件数は480万件。3月には過去最高記録を突破し、いまも記録を更新し続けている。

 この調子でいけば、更正法適用時に金融機関などに対して負っていた410億円の債務も、計画通り6年間で弁済できる見込み。大規模なリストラを実施したわけでもないのに、ここまで回復を果たせたのは、スポンサーであるソフトバンクの経営手法が影響している。

PHS版スマホまで発売する<br />ウィルコム躍進の秘密ウィルコムの寺尾洋幸マーケティング本部長は「毎日同じ数字を見ているとわずかな変化も見逃さなくなる」と話す。ソフトバンク流のスピード経営が板についてきたようだ。

 象徴的なのが2010年の大みそか。紅白歌合戦が佳境を迎えるなかで、ウィルコム執行役員の寺尾洋幸マーケティング本部長のもとに届いた1本のメールだった。

「なぜ契約者が伸びないのか」

 送り主はソフトバンクの孫正義社長。スポンサー会社の社長からの直々のメールに寺尾本部長が面を食らったのも当然だ。しびれを切らした孫社長の一言に正月気分は吹っ飛び、休み返上で対策を練った。

 ソフトバンクの真骨頂ともいえるスピード経営が移植され、幹部の意識も変わり、数字にも表れるようになった。

 それまでは週に1回、契約者数などのデータをもとに営業戦略を話し合い、翌週から施策を実施していた。つまり手を打つまでに2週間のタイムラグがあった。