●在庫を増やさない6つの方法
1.定期的に棚卸しをして、在庫状況を正確に把握しておく
2.「原価率を下げることになる」からといっても、まとめ買いはなるべくしない
3.販売促進用のデモ機などは、設備化して、減価償却をしていく
4.在庫品が売れなくなる前に、値引きキャンペーンをして売り切る
5.不良在庫は利益を削って除却処分する。その分、利益が減少するのを見込んでおく
6.「帳簿には計上されているが、現物がない」といったずさんな管理をしない
経営は少しくらい大雑把でいい

 1998年度に、不良在庫の除却はおおむね完了しましたが、それ以降も、棚卸しのたびに「帳簿と実在庫が合わない事態」が発生しました。
 金額として50万〜60万円のロスが続いたのです。

 数字が合わない原因のひとつは、「デモ機の持ち出し(貸し出し)」にありました。

 たとえば、お客様から修理の依頼があったときに、代替機としてデモ機を持ち出す(デモ機の部品を持ち出す)。
  あるいは、展示会があるときに、デモ機を持ち出す。

 けれど、持ち出しの履歴が残っていなかったため、
「いつ、誰が、何を貸し出したのか」
「いつ戻ってきたのか」
 が明確になっていませんでした(貸出機器を販売したにもかかわらず、報告がなかったこともありました)。

 デモ機の持ち出しを管理する方法として、社員のひとりから、次のような提案がありました。

「近藤さん、パートをひとり雇用したらどうですか?
 デモ機が置いてある1階の部屋の門番として、社員の出入りをチェックさせればいい」

 しかし、私は彼の案を却下しました。理由は2つです。

・「社員の出入りをチェックする」という仕事を与えても、パートのモチベーションは上がらない(モチベーションの上がらない仕事をさせてはいけない)
・パートに支払う給料がロス金額を上回る(パートに100万円支払い、50万〜60万円のロスがなくなっても、結果的に40万円のマイナスになる)

 そこで私は、「最初から、60万円のロスがあるもの」と考えることにしました。
 私が「経営は、少しくらい、大雑把でいい」と発言すると、社員の多くは呆気にとられていましたが(笑)、ここまでバカバカしいことを言わないと社員の意識は変わりません。

 体質を変えるには時間がかかります。
 その後、親会社で生産管理を担当していた社員が定年再雇用で入社。
 棚卸担当役員の執念もあり、日本レーザーの在庫管理は正常になりました。

 現在、当社の管理部門は、経理課長と総務課長、さらに両方の仕事ができる管理部長の3人しか置いていませんし、営業担当者も基本的には自主規律、自主管理に任せているので、少数精鋭化に徹しています。

ps.「25の修羅場」の詳細は、第1回連載「倒産寸前から売上3倍、自己資本比率10倍、純資産28倍!「25の修羅場」が「25年連続黒字」をつくった理由」をご覧ください。きっと、私が血反吐を吐きながら、泥水を飲みながらのここまでのプロセスの一端を垣間見れるかと思います。