京大変人講座 川上浩司Photo:PIXTA

京都大学の超人気公開講座を書籍化した話題の新刊書『京大変人講座』からの一部抜粋でお届けする本連載も、今回がいよいよ最終回。前回に引き続き、「システム工学」を専門とする京大情報学研究科の川上浩司特定教授の講義をお届けする。「不便によってもたらされる利益=不便益」について、具体的な事例を紹介しながら、「不便益」の有用性とは何かを考える。

「不便であることのよさ」は
単なる懐古や精神論ではない

 さて、ここまでいくつかの事例を挙げて「不便」について考えてきました。私はこうした事例を100件以上集めた上で、「不便によってもたらされる利益=不便益」について解析し、次のようにまとめました。

 ◎可視性が高くなる

 ◎気づきや出会いの機会をくれる

 ◎能動的に工夫させてくれる余地がある

 ◎モチベーションが上がる

 ただ、前回説明したような事例を並べると、次のように言われてしまうことがあります。

「これって、単なるポジティブ・シンキングじゃないですか?」

「ノスタルジーですね」

「結局は精神論ですか」