森林に恵まれた国が、「森林の面積を減らさない」という目標を掲げたとしよう。その森林の持ち主に補償金を支払えば、維持してもらうことは可能だ。しかし、いつまでも補償金を支払い続けることは、現実的な選択肢ではない。

 その森林を維持することで、その地域で暮らす人々の現在と将来の生活を安定させることが可能になると、事情は異なってくる。人々は、まず自分のために、そして自分の地域のために、森林を維持し、地球の他地域に貢献することになる。貢献された地域からの経済的な見返り、いわば「先進国税」の試みも、既に現実となっている。

 このような好ましいサイクルを、将来にわたって維持するためには、明日のために、今日、森林を伐採せざるを得なくなる貧困の解消と、すべての人々の生涯にわたる教育機会が必要だ。先進国の都市部でも、貧困と不十分な教育は環境負荷の増大につながる。少なくとも国際会議においては、これが当然の前提だ。

生活保護「劣等処遇」によって
日本はどれだけの損を被るか

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中

 生活保護のもとでの大学進学は実現しないという今回の厚労省見解を、私は心から残念に思う。何をどうすれば実現できるのか、アイディアは何も思い浮かばない。しかし、科学とコンピュータをルーツとする者の1人として、提案したいことがある。

 生活保護への「劣等処遇」を強め、大学進学は認めず、貧困を解消せず温存することによって、日本は世界の国々や人々の期待をどれだけ裏切ることになるだろうか。たとえば地球温暖化と貧困について、世界で妥当とされている計算方法を用いた場合、2010年代の生活保護政策が維持されると、どれほどの問題を生み出すことになるだろうか。日本の今後500年間の国益に対して、何百兆円の損害が生じるだろうか。

 数値と計算と統計のプロフェッショナルである財務省をはじめ、専門家集団であるはずの官僚の皆さんに、ぜひ、ごまかしなく計算していただきたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)