この言葉には、人生が長いことに伴い老後の生活費が足りなくなることに対する不安を喚起する力がある。従って、「人生100年時代」のお金の問題を解決するために、「資産運用をしましょう」、あるいは「専門家に(金融機関に)相談しましょう」という誘導によってマーケティングに大変使いやすいのだ。

 利幅の高い商品を売りつける際に不安を喚起するのは、医薬品や健康食品、生命保険など広い範囲で応用されているマーケティングの常道だ。

 読者は、「人生100年時代」をうたう、記事広告(よくある!)やセミナー、金融商品の広告などを見たら、大いに疑うべきだ。

悪用されそうな4つの表現

 先の報告書に関して、筆者は、この「人生100年時代」のように、一見良さそうなことを伝えているようであって、悪いマーケティングに利用されそうな言葉・表現・記述などをいくつか見つけた。

 以下、高齢期の金融資産の正しい扱い方を考えつつ、悪用されそうないくつかの表現について注意を喚起したい。

 筆者が悪用を懸念するのは、次の4つの表現だ。(1)資産寿命、(2)多様なニーズ・多様な商品、(3)ワンストップサービス、(4)受託者としての資産管理、である。

 いずれも、高齢期の資産管理のポイントに触れているし、正しく使われると事態の改善に役立つのだが、いかにも悪用されそうなのだ。以下、順に見ていこう。

(1)資産寿命

「資産寿命」は高齢期に資産を取り崩した場合に、資産が尽きる年齢を指す言葉だ。「老後の金欠」の恐怖を直接イメージさせる、金融商品マーケティング的には使いでのある表現だ。実際に金融商品の広告で使われている。

 報告書の中では、資産寿命を延ばすために支出をコントロールすることも大事だと書かれている。その通りなのだが、現実世界では、「老後は長い。資産寿命を延ばすために資産運用に取り組みましょう」という文脈で使われることが多い。

 個人としては、実際の寿命よりも資産寿命が短くなると確かに大変なのだが、そうならないための手段は、「余裕を持った資産の取り崩しと、これに対応する支出のコントロール」である。「リスクを取った資産運用でリターンを稼いで資産寿命を延ばそう!」ということに加えて、「リスク運用で資産寿命が延びるはずだから、当面希望額を支出する生活を続けよう」と考えるのは、人生設計上は危険だ。