吃音を指摘して
ストレスを与える必要はない

 私が見た、子どもの本のイベントで「時々つっかかる」男の子も、横井さんは「ある程度の自覚はあっても、それを気にせず話しているのに、周囲が『その話し方はよくない』と言ってしまうと、吃音を『進展』させ、子どもが悩み始めるきっかけにもなりかねません。むしろ、周囲が話し方をありのままに認め、『どもることは悪いことではない』というメッセージを伝えることのほうが大切です」と教えてくれた。

 保護者の吃音は子どもの言葉の発達に影響を及ぼすのだろうか?

 横井さんは「全く心配する必要はないとお伝えしたいと思います。吃音がうつる、マネすることで吃音になるという考え方が、いまだに聞かれることがありますが、いっさい科学的根拠のない話です」と教えてくれた。

 また「子どもが母親に本を読んでもらいたいというのは、大好きな母親の声を聴きたいという自然な気持ち。子どもは、絵本の文字内容をスムーズに再現してもらうことを望んでいるわけではないでしょう?」と横井さん。子どもは母親、もしくは父親に本を読んでもらい、お話を一緒に味わい共感することで、愛情を感じて安心するのだ。

「吃音かどうかは、子どもにとってあまり重要ではありません」。横井さんは、吃音にとらわれ過ぎて、子どもが本当に求めていることを見過ごすことこそ、リスクがあると教えてくれた。

 一方で、吃音のある子どもたちには、厳しい現実があるのも事実だという。実際、吃音に対する学校指導は不透明で、学校の授業で音読がうまくできない子どもたちが自信を失ったり、日常会話でバカにされ心を閉ざしたりする現場は容易に想像できる。

 そんな消極的になりがちな、吃音の子どもたちに寄り添える本はないかと横井さんに聞くと、「将来に対して言い知れぬ不安を抱えている子どもたちにとっては、心強い1冊」と『きよしこ』(重松清著)を勧められた。

 この本は、吃音で言いたいことが言えない少年の、伝わらないことの辛さが描かれている。だが悲しいだけではなく、人との関係や自分の未来に向き合い成長していく少年の姿に共感できる物語だ。私も重松清さんの本はよく読んでいて、『きよしこ』は心に残る1冊だったが、作者の重松清さんに吃音の症状があり、自身の記憶から書かれた本だとは知らなかった。