「引きこもり」は過去の言葉
当事者が求めている自認とは

 1979年生まれの遠藤さんは、いわゆるエリート会社員の父と専業主婦の母のもとで育ち、首都圏で進学校として知られる高校に進学した。高校には強い違和感を覚えていたが、不登校にはならず「単位ギリギリで卒業」したという。大学には進学しなかった。

 高校卒業後の遠藤さんは、平日の日中は引きこもり、土曜日と日曜日はカメラマンのアルバイトをしていたという。しかし、遠藤さんが閉塞感からリストカットなどの自傷を繰り返していると、「家の中の雰囲気が悪くなってきた」(遠藤さん)。そこで実家を出て1人暮らしを始めた遠藤さんは、アパートでも引きこもった。1人暮らしを始めるにあたっては、自活するつもりだったが、両親は生活費の仕送りをしてくれたという。

 もっとも、遠藤さんが高校を卒業してから1人暮らしを始めた1998年から2000年ごろの時期、「引きこもり」という用語は社会でほとんど認知されていなかった。遠藤さんの記憶では、2001年以後、精神科医の斎藤環氏らによる一般市民向けの著述活動から、認知が爆発的に進行したようだ。

「日中は外に出ず、夜になると何か食べるために外に出てイベントに参加したりしていたわけですけど、そういう自分の状態を言い表す『引きこもり』という言葉は、まだ出現していませんでした」(遠藤さん)

 遠藤さんの生活を変えたものの1つは、一般社会からハミ出してしまう人々をテーマとしたイベントでの出会いだった。

「参加するイベントには、自分と何らかの共通項のある人が参加しています。そこで、『親と価値観が違う』『生きづらい』といった共通項を認識していったんです」(遠藤さん)