「別居している親が扶養(仕送り)は困難、または少額しかできないという意思表示をすれば、生活保護の利用は難しくありません。別居なら、扶養義務が保護利用の問題となることはありません。扶養は保護の要件とはされていません」(Iさん)

生活保護で別居して幸せに
最強の処方箋を現実にできるか

 課題は、子の1人暮らしが実現できるかどうかにある。

「最大の壁は、引きこもりの本人を説得する仕組みが不十分なことです。親子関係は良好でない場合が多いので、親が説得することは困難です。行政やNPOなどの専門職が、引きこもりの本人と粘り強く関係をつくり、親世帯から脱出する支援をしていく必要があります。この点の取り組みが弱いため、親から引きこもりの相談があっても、アドバイスでとどまっていることが多いのではないかと思います。引きこもりの子の本人の尊厳を尊重しつつ、もっと積極的に介入していく仕組みが必要なのだと思います」(Iさん)

 しかし「積極的な介入」は、どの地域でも、資金難と人手不足から困難であることが多い。児童虐待では、悲劇が繰り返された後、児童相談所のスタッフが増員されることとなった。しかし、単純にスタッフを増員すれば済む問題だろうか。本人たちの望まない支援が強力に押し付けられ、逆効果になる可能性はないだろうか。

 介入や支援において、何をすべきであり、何をすべきではないのかを最も知っているのは、当事者だ。とはいえ、何を語っても聞き手の聞きたいようにしか聞かれないのであれば、必死で口を開いた当事者は消耗し、二度と語らなくなるだけだろう。

 当事者が安心して語るためには、「うっかり聞き手が困惑することを語ったり、感情を正直に表現したりしたら、精神疾患の可能性を疑われて入院させられるかも」といった恐れのない状況が必要だ。そういう状況は、日本にはほぼ存在しない。

 それでも、誰かを殺したり殺されたりする前に語れれば、悲劇的な結末は回避されるかもしれない。まずは、当事者たちの声に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。

(フリーランス・ライター みわよしこ)