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廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

ソウル市長選挙を揺さぶったDDoS攻撃――韓国インターネット民主主義の光と影(前編)

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第3回】 2012年6月26日
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「認証ショット」で仲間を投票に誘う若者たち

 今ではインターネット民主主義は韓国に定着しています。従来の民主主義は、議員立候補者が宣伝カーやテレビを通じて、自分の意見や主張を訴えるものでした。そのため、1対多数の関係でした。しかし、現在は、議員立候補者がツイッターやフェイスブックなどSNSを通して、直接有権者に訴えかけるため、1対1の関係になっています。また、インターネットによる書き込みなどでも、世論が形成されています。

 そういった中、投票率は5~6割と高く、インターネットで形成された国民の声は無視できないものになっています。

 今年4月に行われた総選挙でも、インターネットによる情報公開が人びとの投票行動に大きな影響を与えました。韓国では大学の修士論文はすべてインターネット上で公開されています。これらを、コンピュータプログラムを使って解析し、盗用や代筆によって修士論文を書いた議員が、ネット上で公開されました。韓国の議員は半数以上が修士以上の学歴を持っているので、これは選挙に大きな影響を与えました。ほかにも犯罪歴や過去の発言など、候補者のさまざまな情報がインターネット上に公開されました。選挙に出るとすべての情報が公けになり、プライバシーがなくなるため、政治家になるには覚悟が要ります。

 選挙当日には、すべての選挙運動が禁止されます。「投票に行こう」と勧誘したり呼びかけたりするのは、選挙違反に当たるのです。しかし、若者の間では、ツイッターやフェイスブックを使って「政権を変えるために選挙に行こう」という運動が盛り上がりました。投票所の前で自分の姿を写真に撮って、ツイッターやフェイスブックにアップする「認証ショット」で、「私は投票に行ってきました!」と単に事実を報告することで、間接的に、仲間に「君も投票に行こう」と呼びかけたのです。

 過去の選挙では、歌手や俳優などの「有名人」が認証ショットを公開すると選挙運動とみなされて違法とされたりもしましたが、これを逆手にとった人たちが、「あなたが『有名人』かどうか、認証ショットで試してみよう。有名人かどうかは選挙管理委員会が判別してくれるよ」と皮肉たっぷりに訴えかけたことで、余計に若者の選挙への注目度が上がりました。実際に誰もが認める有名人などは、顔を半分隠した認識ショットを公開したりしました。

 4月の総選挙の投票率は54.3%超え、前回の国会議員選挙より8%も高い投票率を記録しました。現職の大物議員が次々と落選し、議席の約半数が新人議員となりました。また、議席総数300のうち約50議席が、1000票未満(1%未満)の差で獲得されています。中には3~4票差という僅差だった議席もありました。人びとは、自分の投票が政治を動かすという手応えを感じています。

 韓国でここまでネット世論が重要になってきたのは、実は12年前の韓国版ジャスミン革命が関係しています。次回ではそのあたりの歴史をひも解いてみたいと思います。

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廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

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