近年、大学生の就職活動において最も変化したものは何か、と問われれば、間違いなく「インターンシップ」だろう(以下、インターンと表記)。売り手市場を背景に、企業も多様なコースのインターンを用意し、多大なコストを投下している。しかし、日本においては、インターンの習慣がここ数年間で一気に拡大・定着したため、企業の担当者は前例がない中での試行錯誤が続いている。
その中で筆者が気になっているのは、インターンの「目的」が曖昧になっているケースがしばしばあることだ。多くのインターンは、まだ就活生の希望が固まっていない時期に行われるため(そして「採用直結」のインターンは、関係各省庁により公的には認められていないため)、企業側の目的も「自社のファン作りのため」とされていることが多い。だが、多大なコストの割に、その「ファン」がどれほど増えているのかを検証している企業はほぼない。一企業の中ではそうした効果が測定しにくい事情もあるだろう。果たして、インターンの「ファン作り」の効果は、どれほどなのだろうか。インターンのバイラル=口コミ効果についてパーソル総合研究所が行った調査データを基に、検証してみたい。(パーソル総合研究所 「企業インターンシップの効果検証調査」、新卒入社後3年以内の者1万750人、就業継続者1998人に対するインターネット定量調査。2018年10月実施)
「口コミ」はどこまで広がるか
インターン後の「情報交換」実態
まずは、インターン後に学生が行う情報交換の実態を探った。インターン参加後、86.0%が同期、後輩などとの情報交換を行っており、ほとんどの学生がそのインターンについて誰かに話したり、情報をシェアしたりしているということがわかった。さらに、その情報交換した人数は平均して41.3人。これは想像以上に大きな数字だが、インターン後も、数ヵ月にわたって就活が続くことを考えれば、累計するとおかしな数字でもない。つまり、インターンはその後長く続く口コミの「発火点」であり、そこから学生同士の情報交換を通じ、周囲への高い情報波及効果が見込まれるということだ。単純に試算すれば、100人規模のインターンは、4000人規模の情報交換の「輪」を作り出すことになる(実際には、人脈は重複するためそんなことはないだろうが)。