【メガトレンド6】
寿命の伸長と事業の短命化

 今日、先進国での平均寿命は長期的な伸長傾向にあり、おそらくは近い将来に「寿命100年」という時代がやってくることになります。

 平均寿命が100年になった時代において、人は何歳まで働くことになるのか、という問いに対して現時点ではっきりした答えを出すことはできません。しかし、一つだけ言えるのは、私たちがステレオタイプに考えている「60歳で引退」という人生モデルは、もはや通用しなくなるだろうということです。

 ちなみにロンドン大学のリンダ・グラットンによる『ライフ・シフト』の共著者である経済学者のアンドリュー・スコットは、寿命100年の時代になれば、引退後の蓄えをつくるために、ほとんどの人が80歳まで働かなければならなくなると指摘しています。つまり、具体的な年齢はともかくとして、私たちの多くは、私たちの祖父母の時代よりも、かなり高齢になるまで働かなくてはならない時代を生きることになる、ということです。

 一方で、各種の統計・データが示すところによれば、事業は長期的な短命化の傾向にあります。たとえばアメリカにおけるS&P500の構成企業の平均寿命は、1960年代には約60年だったのが、今日では20年足らずしかありません。

 S&Pの構成企業は「アメリカを代表する企業」という選択基準で選ばれています。そのような企業の平均寿命が、半世紀前には60年だったのが、今日では20年に満たないのです。

 20歳前後で働き始め、60歳前後で引退するという時代にあっては、多くの人が現役として働く期間よりも、企業の平均寿命の方が長かったわけですが、今日、この関係は逆転し、多くの人が現役として働く期間の方が、企業の平均寿命よりも、ずっと長いという時代がやってきてしまったということです。

 以上より導かれる結論は明白です。つまり、多くの人は、人生の途上において複数回のキャリアチェンジを余儀なくされる、ということです。私たちは一般に「この道一筋」とか「一所懸命」といったことを無批判に礼賛する強い傾向がありますが、変化の速い世界においてそのような価値観に頑なに囚われるオールドタイプは、リスクに対して非常に脆弱なキャリアを歩むことになります。

 一方でこれまで長いこと、「腰が据わらない」「節操がない」「一貫性がない」と批判的に揶揄されてきたような生き方、つまり、何が本業なのかはっきりしないままに複数の仕事に関わり、節目ごとに仕事のポートフォリオを大きく組み替えていくようなキャリアを志向するニュータイプこそ、リスクをむしろチャンスに変えていくような、柔軟でしたたかなキャリアを歩んでいくことになるでしょう。

 以上が、これまで成功した人材=オールドタイプから、これから成功する人材=ニュータイプへの変化を駆動する要因となる6つのメガトレンドということになります。

 では、これらのメガトレンドにより、具体的にどのような人材要件のシフトが起きるのでしょうか。ここから先は大きく「価値創造」「競争戦略」「思考法」「ワークスタイル」「キャリア戦略」「学習力」「組織マネジメント」という7つの項目に分けて考察を進めてみましょう。

(本原稿は『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』山口周著、ダイヤモンド社からの抜粋です)

山口 周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。