世論の動向を見ずに
いきなり高齢者向けに増税?

 2005年の老年者控除(50万円)の廃止、公的年金等控除額の縮小(65歳以上の場合で最低額140万円→120万円)の改正案を新聞で見たときは、本当に驚いた。

 翌年の税制改正案は、12月中旬に「税制改正大綱」という形で発表になる。生活に大きな影響を及ぼす増税案は、春くらいから「世論を見る」目的で、新聞等で改正案が報道されるのが一般的だ。

 最近だと「配偶者控除の廃止案」は、1年以上議論され、その結果、政治主導で廃止どころか拡大になった。結果はともかくとして、多くの人の意見を拾うことは重要なこと。

 それが老年者控除の廃止と公的年金等控除額の縮小では、増税案の事前チラ見せもなく、税制改正大綱を新聞で見て、はじめて知った。本当に驚いた。

 しかし、新聞各紙も週刊誌も別途記事で取り上げることはなく、FPとして大綱の隅から隅まで読んで得た情報だ。現役記者には、この2つの増税が将来年金生活者になったとき、少なくない影響を及ぼすことを想像できなかったのだろう。

 公的年金は、制度存続のために導入された「マクロ経済スライド」により、将来にわたって年金額が減少していくことが予想される。また国や自治体の財政や少子高齢化を考えると、高齢者も税金や社会保険料の負担が増えることは避けられないだろう。

 年金の支給額そのものが減り、税金・社会保険料が増えれば、年金の手取り額はさらに減る。厳しい現実であるが、「年金」を考えるうえで知っておきたいことの1つである。

 おりしも、今年は年金の「財政検証」の年。「財政検証」とは、公的年金の“健康診断”のようなもので、5年に一度実施される。人口や経済の動向を考慮し、年金財政が長期的に持続可能かを厚生労働省が検証する。

 3月に厚生労働省の専門委員会の最終会合が行われたので、6月中旬までには発表されると見込まれていたが、未だに発表されていない。おそらく、7月の参議院選挙のあとになるのだろう。公表されたら、一読することをお勧めする。

 年金制度を理解するのは難しい。なぜなら種類が多岐にわたり、改正を繰り返しているため「特例」が多いからだ。私は専門家でない限り、一から勉強する必要はないと考えている。「自分のケース」だけ、知ればいい。

 日本年金機構は「街角の年金相談センター」を設けているので、そこで無料相談を受けることができる。勤務先でライフプランセミナーがあるなら、参加しよう。「仕組み」を知ることが、自衛策を探ることにつながるのだ。

(株式会社生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)