ベタなサクセスストーリーで
集められた巨額の寄付金の行方

 学校の名称は、「T.M. Landry College Preparatory School」という。元セールスマンと元看護師のランドリー夫妻によって、2005年に設立された。当初は4年制高校だけだったが、現在は就学前から大学進学準備までを対象にしている。

 同校が公開している文書によれば、142名の生徒が在籍しており、1クラスの人数は9~12名となっている。学校の所在地は、南部ルイジアナ州の、大都市から遠く離れた小さな町だ。その町は、高校生の全国統一テストの成績も大学進学率も、平均年収も低い。アフリカ系住民の比率は高く、45%に達する。

 ランドリー氏の学校の生徒たちは、全国統一テスト(ACT)で輝かしい成績を修めている。ルイジアナ州平均は全米平均より低いのだが、ランドリー氏の学校の生徒たちの成績は、全米平均をはるかに上回る。そして卒業生は、全員が4年制大学に進学。その中には、ハーバード大学やスタンフォード大学などの名門校も含まれている。

 卒業生たちや学内の写真を見ると、アフリカ系の生徒が圧倒的に多い。それらのイメージが語るのは、「貧しい町で、少人数教育によってアフリカ系の生徒たちの能力を伸ばし、通常の教育では考えられない大学進学に成功させた」というサクセスストーリーだ。

 しかし、同校がウェブページで公開している情報によれば、学費は安くない。最も高額になる高校相当学年で、月額約770ドル、年間9300ドルとなっている。この学費を支払える家庭は、貧困家庭とは言えないだろう。

 ベナー氏らがニューヨーク・タイムズなどで報道した同校の問題は、多岐にわたっている。その1つは、資金に関する不透明さだ。同校は、1988年に話題となった貧困母子のサクセス人情ストーリー『一杯のかけそば』を彷彿とさせるイメージ戦略で多くの人々の心を揺さぶり、巨額の寄付を得てきた。寄付額は、2018年に25万ドル(約3000万円)に達した。いわゆる「セレブ」による大口の寄付もあるが、年金生活者など決して豊かではない人々の寄付もあった。私は皮肉を込めて、「感動ポルノビジネス」と呼びたい。