自分の中のもうひとりの自分を知る方法

 フロイトは、ノイローゼ患者たちの心には、無意識的抑圧が生じていること、それを解放すればノイローゼ症状が消失することを発見しました。フロイトによると、性的な欲求にまつわる体験が、いびつな形(性的に不愉快な体験など)で阻止された場合、心を守るために、その体験内容が無意識の奥底にしまわれてしまいます(抑圧)。

 人間の心は氷山のようなもので、意識の水面上に現れて見えているのは、そのほんの一部分にすぎません。心の大部分は水面下にある無意識の領域に隠されています。

 後にフロイトは、心的構造としてのモデルをつくります(何度か内容が変更される)。

 無意識はエス(イド)の領域と呼ばれ、ここが性的エネルギー(リビドー)の場です。性的エネルギーは幼児期から成長とともに発達していきます。「幼児の性欲」は体全体に拡散していますが、発達段階に応じて特定の部位に集中し、また移動していきます。

 5〜6歳ごろの男子のリビドーは母親に向かい、母親の愛情を独り占めしようとします。その際に父親をじゃま者であると感じます。しかし、この願望は満たされないので母親への愛情と父親への憎しみは無意識の中へと抑圧されます。

 フロイトは、この心理を、父を殺して母を妻としたギリシア神話のエディプス王にちなんで、エディプス・コンプレックスと名づけました。

 このように、フロイトによると社会的・道徳的に許されない様々な性的欲求は、無意識の中に抑圧され、抑圧された衝動は複雑な心的な集合(コンプレックス)となり、理由のない不安や強迫症、麻痺などの多様な神経症の原因となります。

 無意識下に抑圧された性的エネルギーを意識化し、自覚的に調節できるようになれば、神経症は解消するとされました。「無意識的なものを意識的なものに変えることによって抑圧を解消」し、「症状形成のための条件を除き去る」という地道な作業。それが精神分析です。

 病因となる葛藤を、意識上での正常な葛藤に変えることで解決を目指します。

人生で役に立つこと
意識と無意識の科学を理解し、心の葛藤の実像をつかむことが必要だ。その上で、自分が自分の心の主人であることを自覚し、主体的に無意識をコントロールすることでプラス思考を身につけていこう。