仕入れる前からキャッシュが入る
巧みな資金繰り

 高収益事業の成長に加えて、巨額投資を可能にしているのが、堅実な財務戦略だ。

 アマゾンの資金繰りのうまさを示す指標の一つが、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)である(図4)。

 CCCは商品を仕入れてから、代金を回収するまでの資金繰りの効率性を示す指標だ。在庫を減らし、資金回収を早く(売掛金を小さく)して、支払いを遅く(買掛金は大きく)すれば、CCCは改善される。

 消費者の現金払いが多い小売業では、製造業などと比べてCCCは小さい傾向にある。ただ、マイナス20日前後で推移するアマゾンの効率性はずば抜けている。

 CCCの構成要素で目立つのが、代金支払いまでの期間を示す買い入れ債務回転日数の大きさだ。

 巨大な購買力でアマゾンが取引先から有利な条件を引き出している側面もあるだろうが、他社に売り場を提供するマーケットプレイス(サードパーティーセラーサービス)事業の影響も大きい。

 マーケットプレイス上で売れた商品の決済をアマゾンが代行し、実際に出品者へ入金されるまでには数週間の猶予がある。その分、アマゾンの資金繰りに余裕が生まれるというわけだ。

 ホールフーズ買収やAWSの躍進など、本業以外の拡大によってCCCは一時のマイナス30日から悪化傾向にある。

 とはいえ、仕入れ代金を支払うよりも前から手元にキャッシュが入ってくる状態は変わらず、その間は自由に資金を使うことができる。アマゾンはこの強固な財務基盤があるからこそ、資金調達に頭を悩ますことなく、巨額の投資が可能になるのだ。

 eコマースに次ぐ収益の柱を手に入れ、資金繰りは万全の状態をキープする。アマゾンの対抗馬はそう簡単には誕生しそうもない。