『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、ウォール街からシリコンバレーまで全米企業への徹底取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第7回は安倍政権が「女性の活躍推進」を掲げ、日本企業にとっても喫緊の課題「ダイバーシティ」がテーマだ。
ダイバーシティはチームに悪影響を与える?
アメリカでもほかの国でも、職場が多様性を増してきているのは明らかだ。それはよいことである。人口動態の変化によって、また女性やマイノリティによる公民権の獲得によって、昔とは比べものにならないほど多様な組織が生み出されているのだ。
思うに、これによって、チームに多様性があればすぐさま、知識を相乗的に増やしたり情報を共有したりできるようになり、結果として創造性が高まる、ひいてはチームの業績が上がるという強い思い込みが、研究者の間にも一般の人々の間にも広まってきているのではないだろうか。
しかし研究調査では、人種・民族や性別の多様性がチームの業績にプラスの効果を確実にもたらすことが明らかにされていないのだ。実際、MITスローン経営大学院(通称MITスローンスクール)のトーマス・コーチャン教授の受賞した論文では、ダイバーシティに関する問題はいまだに予算が充てられるのが難しい状況だ、と結論が下されている。
五年にわたる研究調査に基づき、コーチャンとそのチームは次のように言いきった。「多様性が組織のなかで果たす役割を人々があまり意識していない場合、人種や性別が多様であっても、取り組んでいる仕事の業績に好影響はとくにないことがわかった」
実は、ダイバーシティはチームのコミュニケーションによくない影響をもたらす場合があることが、多くの研究によって明らかにされているのだ。多様であるせいで、業績が低下したりチームメンバーの満足度が下がってしまったりする可能性もある。別の言い方をすれば、チームメンバーが仕事にもたらすさまざまな見方や行動、態度、価値観が、共有することに悪影響を及ぼす可能性がある、ということだ。
結果として、すぐに不協和音が生じる。すると、多様性を持つチームをリードしたり、そういうチームと一緒に仕事をすることが難しくなる。必然的に、可能性を引き出したり一人ひとりの能力を最大限に活用したりする力が不可欠になる。