自分が思ったほうにしか
人生は動かない
――私は40代女性で転職活動中です。今までサービス業、接客業しかやったことがないのですが、実はマーケティングにずっと興味がありました。今からでもマーケティングの仕事に携わることはできるでしょうか?
「できます。100%間違いなくできます。マーケティングとは、消費者が求めている本質的なニーズに合わせていくことです。それはどこでもできます。マーケティングという業務に就けるかという狭い意味での質問だったとしても、それはできます。もちろん人によって向き不向きはあるでしょうけれど、何歳からでもマーケティングはできます。マーケティングのスキルの習得は後天的に何歳からでも可能なのです。ただし、マーケティングに必要なT(Thinking=考える力)、C(Communication=コミュニケーションする力)、L(Leadership=リーダーシップ)のポテンシャルは、人それぞれ、先天的にある程度決まっている部分があります。でもその中で自分の能力が活きる部分を見つけていけば、できるはずです。本当にマーケティングがやりたいんだったら、やるべきなんです。マーケティング業務の中で自分が活きる領域を探せばいいんです。マーケティング業務にもいろいろあります。私が得意な数学マーケティングから、数学はまったく関係ない感覚的なセンスが問われる部分まで。あるいは消費者のコメントの中から真実を導き出すのが得意な人もいる。周りの人を元気づけてチームを盛り上げていく人もマーケティングには向いています。ビジネスの8割はマーケティングに関係しているといっても過言ではない。だから何歳からでもマーケティングはできます」
――USJのように成功している仕事をバサッと切り離して辞めていくというのはとても難しいと思いますが、どのような心がけをされているのでしょうか?
「実は私は自分が気に入ったものと別れるのがとても苦手です。携帯電話だってずっと機種変更していない。自分の相棒のような愛着が湧いてしまうんですね。何かを切り離すときは本当に激痛です。でも目的は何なのか、その目的を達成するのに必要なことは何なのかということを判断しなくてはいけない。USJである新アトラクションを導入するために、愛着のあったアトラクションをクローズしなくてはならないことがありました。それは本当につらい決断だった。みんな涙で見送りましたよ。でもそれは数学的に自明だったんです。その新アトラクションを導入する場所とタイミングは、そこしかなかった。そんなときリーダーは、こだわり、情熱、感情に匹敵する冷徹さを持たなければならないのです。決断しないほうが実はやさしい。でも迷ったときは厳しいほうを取るということです。私が楽かどうかはどうでもいい。私のために、私が正しいと思った確率の高い決断をしないと、私は私でなくなるのです。意思決定を早くするという練習を日ごろからしていました。たとえばレストランに入ったら、3秒以内にメニューを決めるとか。迷わないで決めるという練習をしていました。本当は迷うこともあるんですよ。人知れず悶絶することもあります。でも誰かが決めなければならない。だとすれば自分が決めるしかないんです。それがリーダーの仕事です」
――僕は高校生なんですが、今の高校生や若者に伝えたいことはありますか?
「あくまでこれは私が歩んできた人生の中でわかったほんのひとつの真実なのですが、人生は自分が思ったほうに動くということです。望まないとどこにも行かないのです。だから欲を持ってほしい。自分はあれが欲しい、こうなりたい、という欲に対して素直になること。それを願って願って、紙に書いて貼ってほしい。そうすれば、成功するかどうかはわからないけど、近づくことはできる。欲こそがエネルギーです。私にとっての楽しみは、あれを知りたい、という知的好奇心です。これを毎日積み重ねていけば、知らなかった新しい世界が見えてくる。私にとって大切なのは金銭欲でもなければ物欲でもない。自分の知的好奇心を満足させれば、世の中のためにもなるし、自分も楽しい。それがすべてです。だから高校生に言いたいのは、自分の欲をどれだけ爆発させられるかどうかということです。爆発させればさせるほど、自分が非力な存在に思えてくる。不安になる。でもそれでいいんです。たとえば、東大に行きたいと思ったら、たとえ偏差値が30でも諦めないでください。もしかしたら行けるかもしれません。望んだ方向にしか人生は動かないのです」
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