中小零細企業の淘汰を促し
労働者を守る

 このように労働者をとりまく環境がまったく異なることに加えて、日本の最低賃金引き上げ議論で、韓国がほとんど参考にならない理由がもう1つある。

 それは最低賃金引き上げの目的だ。

 先ほど触れたように、韓国はこれを「労働市場の格差解消」に役立てようとしている。しかし、日本の場合はどちらかといえば、「生産性向上」のためである。

 実は韓国ばかりを「異常」扱いしているが、日本の中小企業比率も先進国の中では際立って高い。と言うと、そのように小さくても高い技術を持つ中小企業がたくさんあるのが日本の強みだ、とか自画自賛を始める人も多いが、韓国の例からもわかるように、小さな会社は多ければいいというものではない。しかも、これから日本の人口は1億をきって、フリーフォールのように減少していく。

 労働者が減るのに、中小企業の数が多いままだったら、、いずれは韓国と同じ問題が起きるということだ。つまり、大企業に入社できた人は高収入が得られるが、そこからこぼれた人たちは、無数の零細事業者でクビ切りの恐怖と闘いながら、低賃金で働かされるという二極化が進んでいくのだ。

 このような未来を避けるためには、「賃上げ」が必要だ。最低賃金を引き上げれば、低賃金しか払えない事業者は自然と淘汰されていく。そこで働いていた労働者は一時的には職を失うかもしれないが、人手不足なので、より大きな企業へと吸収されていく。

 つまり、人口減少社会での最低賃金引き上げというのは、「労働者の集約」と「増えすぎた事業者の整理・統合」という効果が期待できるのだ。

 もっと厳しいことを言ってしまうと、最低賃金の引き上げというのは、「多くの労働者を助けるため、低賃金しか払えぬ経営者を減らす」ということが最大の目的なのだ。

 もちろん、冗談じゃないという中小企業経営者の方も多いだろう。日本商工会議所などは、すでに事業者は賃上げをしているので、これ以上やったら大変なことになるとご立腹だ。

 現段階で言えるのは、「最低賃金引き上げ」というのは人口減少国家にとって避けて通れぬテーマであり、すべての国民に関係がある問題だということだ。選挙の公約にもなったことだし、「俺には関係ないや」という感じではなく、是非とも関心を持っていただきたい。