問題は、今日の「落ちていた500円玉を拾ってネコババ」が、将来の重大犯罪につながるかどうかは、その人が精神障害者であろうがなかろうが、誰にも予見できないということだ。

 しかし精神障害者である場合、医療観察法施設に入院させることが可能だ。懲役とは異なり、出所の見通しがあるわけではない。「人権侵害」という法曹や精神医療関係者からの批判は、当時も現在も続いている。

 とはいえ、今回の京都の放火事件のA氏には、下着泥棒やコンビニ強盗の前科があり、実刑にも服してきた。「いずれかの時点で医療観察法が適用されていれば、今回の事件は予防できた」という考え方には、一定の説得力はありそうだ。医療観察法に対して肯定的ではない弁護士たちは、どう考えているだろうか。

「二度と起きてほしくない」
その希望を実現するには

 障害者の状況に詳しく、日弁連や政府の委員会で長年にわたって活動している弁護士の池原毅和さんは、警察が逮捕の直後に行った情報公開と報道に「逮捕直後に疾患歴の正確性が確保できているか疑問があります」と釘をさす。

「精神科を受診した経歴、治療中という事実、精神疾患の診断名だけでは、概括的すぎます。犯罪行為との関係の有無は判断のしようがないはずです。けれども一般の方々は、『だから』『なるほど』と短絡的に、動機や犯行内容を理解しがちです。報道機関としては、犯罪との関連性を示せない情報は出さない対応や、『病歴や病名だけでは、ほとんど犯罪との関連性を検証できない』という医学的解説を加える必要があると思います」(池原さん)

 とはいえ、一般市民には知る権利がある。司法福祉分野の問題や刑事政策に取り組む弁護士の吉広慶子さんによれば、単純な解答はなく、「メディアによる報道は、国民の知る権利とプライバシー権との利益衡量になります」ということだ。