ベトナムの紙幣Photo:PIXTA

 昨年以降の米トランプ政権による対中制裁措置の発動をきっかけにした米中貿易摩擦を巡っては、米中双方による制裁強化を受けて両国間の貿易が滞るのみならず、世界的な貿易の萎縮を通じて世界経済に悪影響を与えることが懸念されている。

 昨年末以降の世界貿易は頭打ちの動きを強めているほか、そうした動きに呼応するように企業マインドも製造業を中心に悪化の度合いを強めており、景気減速を意識する向きも出ている。近年のアジア新興国は中国を中心とするサプライチェーンに組み込まれてきたため、多くの国々で輸出の鈍化が景気の足を引っ張る動きが顕在化している。

 その一方、ベトナムについては元々、近年の中国国内でのさまざまな生産コスト上昇を受けて生産拠点を移す動きがみられるなか、米中摩擦の激化がその動きを後押しするとの期待が高まっている。事実、ここ数年のベトナムにおける対内直接投資は文字通り「右肩上がり」の展開が続いており、昨年は過去最高を更新している。

 ベトナムは日本も参加するCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定:いわゆる「TPP11」)の中で、最も利益を享受できるとみられることも投資流入の動きを後押ししてきたが、米中摩擦による「漁夫の利」への期待もその一助になっている。