小沢一郎元代表ら民主党議員49人(衆院37人、参院12人)が、離党届を輿石東幹事長に提出し、新党結成に動き始めた。消費増税を巡る民主党内の対立は、遂に党分裂に発展した。ただ、野田佳彦内閣にとっては、最初から想定の範囲内だろう。小沢グループは約100人とされていた。しかし、離党届を提出したのは約半数にとどまった。先の衆院選で小選挙区から当選したのは25人だけで、12人は1回生議員という、選挙基盤が弱い議員ばかりだ。

 これでは、「消費増税関連法案」の成立にまったく影響はない。確かに、12人の参院議員の離党で、民主党が参院第一党を維持できるかが際どくはなった。だが、所詮は「参院議長になりたい」という輿石幹事長の悲願達成が難しくなったという私的な話に過ぎない。むしろ、選挙制度改革で「一部連用制」などという摩訶不思議な案を民主・公明でゴリ押ししづらくなったのはいいことだ。民主・自民・公明の「三党合意」がある限り、参院民主党で約80人近い造反者が出ない限り、消費増税関連法案の否決はないというのが、圧倒的な現実なのだ。

 もちろん、消費増税関連法案可決後に、自民・公明は衆院解散を強く要求するだろう。小沢新党の登場で、内閣不信任案可決の可能性が高まった。しかし、野田首相は、解散総選挙を恐れてはいない。細川護煕元首相直伝の「一内閣一仕事」を信条とし、「政治生命を賭ける一仕事」消費増税が実現すれば、下野しても構わないと考えている。

 マニフェストが崩壊した民主党にとって、「消費増税の日程を決定したら、国民に信を問う」というのは、唯一残っている国民との約束でもある。消費増税の是非を問う総選挙を行うのは、野田首相には当然のことで、内閣不信任案可決や参院第一党維持のラインを論じること自体、無意味なことなのだ。

 更に言えば、野田首相が37人の離党者を除名したが、これで自民・公明は「三党合意」を順守せざるを得なくなる。消費増税の実現は、更に盤石なものとなる。「民主・自民・公明による消費増税のコンセンサス形成」という絶対的な現実の前には、小沢グループの離党など小さな話に過ぎないのだ。