ちなみに、プロ野球のドラフト制度も、選手に球団選択の自由を認めないわけだが、これは「各球団の強さをそろえてプロ野球を面白くする」という目的も背景にあって認められているのであろう。これも、正義と正義の間で調整が図られている意味では、タレントと芸能事務所の関係と似ているのかもしれない。

 余談であるが、企業が社員を留学させる際に、「帰国後5年以内に退職したら留学費用は返還します」といった誓約書を書かせることがあるようだ。これは、「各人の留学費用は各人の帰国後5年間の業務への貢献で回収する」という会社の計算なのだろう。タレントのように、売れる人と売れない人の差が大きい場合には使えない手法である。

移籍料を払えば
移籍できるシステムが望ましい?

 こうした問題に対する1つの解決策としては、例えば、「最低落札価格11億円で入札を行う」といった方法が考えられる。つまり、他の芸能事務所の中で、最も高い移籍料を払った事務所にタレントが移籍するのである。

 もちろん、タレント自身がクラウドファンディングで11億円を集めることができれば、独立してもいいだろう。事務所を設立して銀行から11億円を借りてもいいだろう。貸してくれる銀行があれば、の話だが。

「移籍料を払わなくても、デビューして10年たてば無条件で独立してもいい」といったルールも可能かもしれない。10年間はタダ働き同然で事務所のコスト回収に協力させられるものの、その後の稼ぎは自分のものになるのであれば、貧しいタレント志望者にとっては大きな希望となるはずだ。

 いずれにしても、仮に芸能界にタレント拘束の慣習があるのであれば、業界と公正取引委員会が納得でき、業界の発展にもタレントの人権にも配慮したような対策が望まれる。