「前例がない」は足かせ
新しいことを否定する理由にならない
皆様に知ってほしいのは、こうした新企画は私が考えたものではないことです。一連の思い切った仕掛けは、私がピューロランドの運営に関わる以前から、社員やスタッフが心のなかで温めていたのです。日頃からキャラクターにどんな可能性があるか考え、感じていたスタッフたちの努力と卓越したセンスが生み出したものなのです。
今のハローキティは親子3代にわたって親しまれる世界でもまれな存在であることも、よく理解していました。ですから、ターゲットを変えることへの心配はなく、もっと大人の女性に受け入れられるピューロランドにシフトすべきだと考えていたのです。
私が貢献したとすれば、社内のコミュニケーションが円滑になるよう取り組みを続けたことで、それまで社員やスタッフたちが温めていた思いを発言しやすく、前例のないことにも挑戦しやすい雰囲気にしたことでしょうか。
私は「前例がない」という理由が大嫌いでした。現状を打破するためには前例のないことにこそ挑戦する価値があると思っているからです。
組織のよくある問題に、「前例がない」という理由で挑戦の芽を摘み取ってしまうケースがありますが、面白いことは前例にない発想から飛び出してきます。ほとんどの「前例がない」は、リスクヘッジには必要な視点ではありますが、伸びようとする組織にとっては足かせであり、課題の先延ばしだと思っています。
もちろんオールナイトイベントも男性限定イベントも、前例がないので実現までにはクリアすべきハードルがたくさんありました。「ピューロランドらしくない」と批判されたこともありました。クレームが発生する可能性だってありました。
でも、課題は一つひとつ解決していけばいいのです。
「新しいことを何かやって」と期待しながら、かたや、前例がない、とブレーキをかけるのではなく、時には矢面に立ってチャレンジを促す覚悟が問われていると思います。