“世界一厄介な課題”と言われる「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」に挑む日本人起業家がいる。アストロスケール創業者兼CEO、岡田光信さんだ。2013年、資金も人脈も技術もない40歳が始めた「無謀な挑戦」は、たった6年で150億円を超える資金を調達して独自技術と世界初のビジネスモデルを構築し、さらに2020年の半ばにはスペースデブリ除去実証衛星の打上げも控えている。そんな“宇宙起業家”が自身の思考の原則を初めて明かした『愚直に、考え抜く。』から、反響の大きかったノウハウをご紹介する。今回は、人生の決断に役立つ判断基準を明かす。

IT企業を続けるべきか、やめて宇宙に行くべきか

 夢中は努力に勝る。夢中の根源はワクワク感だ。お金だけをインセンティブにしてしまうと、たとえ熱中できるものだったとしても、お金にならなくなったときにやめてしまうし、たとえお金があったとしても、最後まで「走りきる」ことができない。

「中年の危機」に陥り悩んでいた39歳のとき、当時経営していたIT企業は、伸び悩んでいた。複数の安定した案件があったから、生きながらえることは可能だが、成長企業に見るような二次曲線のようなカーブはまったく描けず、売上はまっすぐゆっくり伸びる直線だった。

 シンガポールを中心として、インド、インドネシアなどのアジア圏を開拓していく、そんな課題を設定しようか。きっと楽しいだろう。やりがいも相当あるはずだ。それにはチームメンバーも増やさないといけないな、借り入れも増やして資金を獲得しなければ……。

 だが、そんなことを考えていたときに、ふと気づく。
「どうして、ワクワクしないんだろう」

大人が忘れてしまった原初の判断基準を思い出せ

 赤ん坊の判断基準は、「快/不快」だ。

 それが少年になって「善/悪」を学び、大人になると「損/得」を学ぶ。大人は、そうした3つの基準をミックスして生きている。

 当時の私が選ぶべき道は、損得のスケールで考えれば、IT企業をさらに成長させるべきだ、という結論しかなかっただろう。しかし、私の心はその選択を「不快」だと感じた。ワクワクしない、と。

 正体不明の焦りや不安に駆られるときこそ、一度立ち止まり、「損/得」ではなく、「快/不快」で考える。そうすれば、それまで見えていなかった新しい道が見えてくるだろう。