“世界一厄介な課題”と言われる「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」に挑む日本人起業家がいる。アストロスケール創業者兼CEO、岡田光信さんだ。2013年、資金も人脈も技術もない40歳が始めた「無謀な挑戦」は、たった6年で150億円を超える資金を調達して独自技術と世界初のビジネスモデルを構築し、さらに2020年の半ばにはスペースデブリ除去実証衛星の打上げも控えている。そんな“宇宙起業家”が自身の思考の原則を初めて明かした『愚直に、考え抜く。』から、反響の大きかったノウハウをご紹介する。年間100フライトをこなしてでも「現場」に行く、その理由とは?
年間100フライトしてでも「現場」に行くべき理由
人は噂が好きだし、ネットの情報を信じてしまう。二次情報を意思決定の判断論拠として使ってしまう。だから、二次情報に頼る者は、異なる噂や情報を聞くと、判断が左右に揺れることになる。
一次情報に接しなければならない。自分自身で、本物を見る、本場で感じる、本人に聞く。そうして初めて一次情報は手に入る。
私が年間100回以上のフライトをこなして世界を駆け回るのは、一次情報を得るためである。私には今オフィスが4か所あり、日本、シンガポール、イギリス、アメリカを飛び回っている。しかし、それぞれの地で各オフィスにずっといるわけでもなく、ほとんどが外出である。
私は広く動いている。
そんなに飛び回っていたら、時間とコストがかかるではないか、と思うかもしれないが、まったくの逆である。
人に会いたいのなら、会いに来てくれるのを待つより、会いに行ったほうがいい。待つ時間の分だけ、判断が遅れる。会いに行くならこちらが時間をコントロールできる。
私だけで年間2000万円以上の出張費がかかっている。これは高いのか、安いのか。圧倒的に安いのである。私はアストロスケールを1日存続させるのにいくらかかっているのか知っている。私が判断を間違い、手戻りを起こすことで1週間のロスを与えれば、それだけで損失は2000万円を遥かに超える。