申し入れは、事件発生から1ヵ月が経過したことを受け「事件の全体像が正確に社会に伝わらない懸念を抱く」「過去の事件に比べても極めて異例」として速やかな実名公表を求めた。加えて、今回を先例としないよう要請した。

 会議側はまた、遺族取材は「心情に配慮し、節度ある取材の在り方を考えながら報道に当たっている」と主張している。

 筆者の全国紙時代の後輩である社会部デスクによると、事件から半月がたった2日、西山亮二捜査1課長は身元を公表する際に「実名の公表について了承していただいた方、葬儀を終えられた方を明らかにすることになった」と説明したという。

 2005年に施行された犯罪被害者基本法の犯罪被害者等基本計画では、犠牲者や被害者の実名・匿名は警察が判断する。匿名は性犯罪などに限定され、京アニの事件は身元が発表されるケースだ。

 しかし事件発生から4日後、京アニ側が「実名が発表されると被害者や遺族のプライバシーが侵害され、遺族が甚大な被害を受ける」などと訴え、発表を控えるよう府警に要請していた。

 府警は遺族対応のため約100人の特別支援チームを組み、今回の問題についても丁寧に説明して同意を求めた。一方、内部では「葬儀が終わるまではそうっとしてあげてほしい」との声もあったという。

匿名でも伝わる事件の概要

 今回、府警は記者クラブ側に身元を公表するとともに、それぞれの遺族に取材が可能かどうか、その際は誰が窓口になるかなどの条件も提示。遺族側に配慮した上で調整したとの見方もできるが、取材に“事実上の制約”を設定した。

 西山課長はこれまで、遺族に「身元を匿名にするとさまざまな憶測が飛び、誤った事実が流れる」「犠牲者や遺族の方々の名誉が傷つけられることもある」と説明してきたという。

 こうした背景には、警察庁の意向が働いたとされる。実名の公表を望んでいないのに「警察発表」で不快な思いをした遺族がいれば、批判は警察に向く。だから「了承」した遺族だけに限定したということらしい。

 実はこれまでにも、犠牲者が匿名だったケースはある。