世界中で問題になっている
オーバーツーリズムの深刻

 わかりやすい例が、京都だ。住宅街でのゴミのポイ捨てや敷地内への不法侵入はもはや当たり前として、市民の足であるバスが凄まじく混雑し、「京都駅を出るだけで20分かかる」などの苦情が殺到している。また、祇園では、町家の格子戸が破壊されたり、舞妓さんが盗撮やストーカー被害にあったという報道もある。

 つまり、国や自治体、一部の観光業者がインバウンドバブルだなんだと浮かれているかたわらで、そこで暮らす住民は「観光奴隷」と呼んでも差し支えないほど、ガマンを強いられているのだ。

 という話をすると、「それはまだまだ日本の観光対応が未熟だからで、これからどんどん改善されていく」みたいな反論をする人もいるが、そういう甘っちょろい希望的観測が通用しないことは、日本よりも遥かに多くの観光客が訪れ、日本よりも遥か昔から「観光大国」となっている国々が証明している。

 例えば、フランスに次いで世界第2位の集客力を誇り、「観光立国の成功例」として長く持ち上げられてきたスペインのバルセロナでは、ゴミ、混雑、環境、治安悪化、地価の高騰があまりに酷くなって、ついには住民による「反観光デモ」や、観光バスを襲撃してタイヤをパンクさせるという「反観光テロ」まで起こっているのだ。

 このような「オーバーツーリズム」(観光地やその観光地に暮らす住民に観光が与える過度にネガティブな影響)は今、世界的にも問題になっていて、国連世界観光機関(UNWTO)も、《「オーバーツーリズム(観光過剰)」?  都市観光の予測を超える成長に対する 認識と対応》(2018年)の中で、「適切な管理の欠如と無秩序な開発に尽きる」と指摘している。

 ここまで言えばもうお分かりだろう。横浜の山下埠頭にIRを持ってくるというのは、横浜市民の日常を破壊する「無秩序な開発」として、深刻な「オーバーツーリズム」を引き起こす可能性が高いのだ。

 なんてことを口走ってしまうと、カジノ推進派やIRビジネスに関わっている方たちから、「デマを撒き散らすな!IRで地域が潤えば、そういう観光公害を解決する費用も捻出できるんだ!」というような怒りのクレームが入るかもしれない。