一方、中央区と対照的な地域がある。それは従来より「高級住宅地」のイメージが強かった世田谷区である。世田谷区は、2017年から建築物に高さ制限をかけた。これにより、高い建物はほぼ建たなくなった。こうして、世田谷区は高層マンションの建たない戸建て中心の立地になった。

 中央区が人口を倍増以上させた1997年から2019年の間に、世田谷区でも人口は増えたものの、その増加率は15%に過ぎない。人口増加のメッカは都心へとシフトしている。

 そうなる過程においては、住民の意見が重要な鍵を握る。世田谷区も高さ制限に舵を切るため、区民アンケートを取り、公表している。どうしても、田園風景を支持する高齢化している現在の居住者の意見を聞いてしまいがちだ。既得権益を持つ高齢者の意見は、残念ながら未来志向から遠のく傾向になりがちだ。政治や行政は未来志向を失うと、時代遅れになる。住民には将来ビジョンがない場合が多いからこそ、政治にはリーダーが必要なのだ。

世田谷区が自滅を招く政策
なぜ戸建て中心の街は没落するのか

 さて、このような事情で、世田谷区はマンションが少なく戸建てが多い住宅街となった。実はそのことが、世田谷区が没落する要因の1つとなっている。

 東京都では、人口の増減に最も影響を与える死亡と出生の人口は、すでに死亡が上回る事態になっている。そこで起きることは、相続の大量発生だ。相続資産の約半分は不動産であり、大方が自宅である。戸建てがほとんどを占める自宅が、相続で大量に売却物件として市場に出てくる。これを購入したいのは、ほとんどが子育て真っ盛りのファミリー世帯であるが、出生人口は減少の一途をたどっている。

 こうして、戸建ておよび戸建て用地の需給バランスは急速に悪化しており、今後は今以上に悪くなることが確定している。これが少子高齢化における土地売買の需給バランスの実態だ。この結果、マンション価格がアベノミクスの金融緩和によって3割以上上昇したにもかかわらず、戸建てとその用地価格はほぼ横ばいにとどまっている。今後、金融緩和が終われば、地価が真っ先に下がることは必至と思われる。