家族と外出したり、家事を手伝うことはできますし、思考が前に進まなかったり、頭が働かないといった症状は軽いものの、「このままでは、いつまでたっても変わらない、いずれは退職しなければならなくなる」と、回復が停滞した状態に耐えかねていたところ、知人の勧めもあって医療機関を変えてみようと考え受診されました。

【中村医師の回答】
「心に湧いてくる考えを、いったん棚上げしてください」

◎十分なヒアリングが、二人三脚の信頼関係を示唆します

 初診時には、上記の症状と経過から「うつ病」と診断しました。

「3ヵ月前から休職して休息に努めていても、いまだに何もかもおっくうなんですね?」「朝から気分が塞いでやる気が湧かない状態が続いているのですね?」「今まで、そんなにご自分を責め続けてもきたのですね?」「夜もよく眠れず、朝も早くに目が覚めてしまうのですね?」というように、疑問形で質問を向け、患者さんの同意が得られるか、1つ1つゆっくりと確かめていきました。

 疑問形で尋ねて患者さんの同意の有無を確かめるという問診は、これからの治療が患者さんと医師の共同作業であることを示唆する重要なステップであり、良好な信頼関係、治療関係の構築に寄与します。

◎うつ病であることを患者さんにお伝えします

 初診時の問診により、うつ病の診断がはっきりしたら、うつ病であることを明確に伝えることが原則です。

「○○さんが苦しんでこられた状態は、やはりうつ病という病気による症状だと思います。うつ病は本来、時間の経過とともに自然に回復する病気です。○○さんの場合、経過が少し長引いているようなので、治療を見直して、なるべく速やかな回復がもたらされるような療養の仕方を探っていきましょう」と伝えました。

「自分を追い込むような考えがいろいろ頭に浮かんでくるようですが、これらは病気の症状とみなし、まずはいったん棚上げしてみませんか。リワーク・プログラムへの参加は時期尚早だと思うので、今は手の付けやすいことを実行しながら、時間を味方に付けるようにしていきましょう」と語りかけました。

 前医から処方された抗うつ薬は徐々に別の薬に置き換えていくことにし、2~3週間に1回のペースで外来治療を開始しました。毎回の診察では薬物療法と共に、以下のような森田療法的な養生指導を行うことにしました。