慰安婦問題や徴用工問題に対して韓国政府がとった行動は明らかに無責任であり、看過されるべきではない。

 しかし、外交は戦略を持って結果を作る作業であり、国内世論に迎合するように相手への強い行動を示すことに目的があるわけではない。

 例えば、日本政府がいかに否定しようとも、元徴用工への賠償責任を認めた判決が出た後のあのタイミングで、輸出管理強化の対韓措置をとり、担当大臣が対抗措置をにおわせるような表現で説明すれば、韓国は徴用工問題への報復措置と決めてかかるのは予想された。

 だが、それが徴用工問題の解決という結果をもたらすことになるのだろうか。おそらくそうではあるまい。

 朝鮮半島の人々が持つといわれる「恨(ハン)」という意識は、朝鮮民族が長年にわたり中国やロシア、日本といった周辺の大国に脅かされ支配されたことや、それを防げなかった政府への強い恨み、憎しみ、悲しみであると説明される。

 特に直接支配をした日本への「恨」は格別強いとされる。

 日本が大上段に振りかぶって韓国をたたけばたたくほど、この「恨」という感情を刺激し、どんな理不尽な手立てを使っても日本に抵抗しようという意識をかき立てる。

 GSOMIAが韓国も利するものであるにもかかわらず、あえて破棄という決定を行った青瓦台は、こうした国民の意識をわかった上で極めて政治的に動いたということなのだろう。

話し合い基調の外交に戻せ
首脳会談で打開を

 日韓関係の修復のためには、まずは今一度、話し合いを基調とする外交に戻すべきだ。

 しかし、外交の時間は限られているのかもしれない。今後、日韓の首脳が顔を合わせる機会としては、9月末の国連総会、10月22日の新天皇即位の礼があるが、ほかにも東アジアサミットやASEAN関連の会議、APEC首脳会議、日中韓首脳会議などでの機会が考えられる。

 6月の大阪G20首脳会議の際のように、ほとんどの諸国と2国間の首脳会談を実施したのに韓国とは行わないといった、これ見よがしな対応を再びとるべきではない。

 一方で、11月23日はGSOMIAが正式に失効する期限だ。徴用工問題についても差し押さえられている新日鉄住金(現日本製鉄)資産の現金化が行われてしまえば、日韓関係はもう後戻りが利かないほど泥沼化の道をたどる。