フィヒテが土壇場で
火をつけた愛国心

 まさにプロイセンという国家が滅ぼうとしかけたとき、当時のベルリン大学学長・フィヒテ(1762‐1814)が「ドイツ国民に告ぐ」という演説をして国民を熱狂させたのです(書籍は『ドイツ国民に告ぐ』フィヒテ述、大津康訳、岩波文庫)。

「大変だ、ナポレオンに敗けて、国土は半分になった。でもプロイセン国民としてもう1回ゼロからやり直して、プロイセンを立て直そうぜ」と。

 この表現、何かを、思い出しませんか?
 ナポレオンが「フランス国民よ、立ち上がれ」と煽ったのが、そのままはしかのようにフランス中に広がった。
 同じように、フィヒテの演説もプロイセンの国民を大いに鼓舞したのです。
 フィヒテの演説によって、プロイセンという想像の共同体が出来上がり、愛国心が燃えたぎったわけです。

 人類最高のイノベーションである、産業革命と国民国家(ネーション・ステート)という歴史の大きな流れの中で、ヘーゲルやマルクスも、大いに刺激されながら、自身の思想を育んだのです。

 産業革命と国民国家が手を結ぶと、めちゃくちゃ強い国ができる。
 産業革命は機械生産ですから、鉄砲や大砲もたくさんできる。
 さらに人々がお国のためにという愛国心を初めて持つわけですから、これまでとは団結力が違う。

 だからこそ、産業革命と国民国家の2つによって、ヨーロッパは世界の列強にかけあがったわけです。
 こういう時代背景こそが、ヘーゲルやマルクスの哲学を完成させたのです。

(つづく)