【出口治明】
フランス革命とは
「新聞」の争いである！

世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU（立命館アジア太平洋大学）学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。
その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著が、なんと大手書店のベストセラーとなり、話題となっている。BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ＝ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した本だ。なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか？
脳研究者で東京大学教授の池谷裕二氏が絶賛、小説家の宮部みゆき氏が推薦、某有名書店員が激賞する『哲学と宗教全史』が、発売後たちまち第3刷が決まり、「日経新聞」にも大きく掲載された。
9月7日土曜14時、東京・八重洲ブックセンターに約80名が集結。満員御礼で行われた出版記念講演会の6回目を特別にお送りしよう。

フランス革命と「新聞」

　今回はフランス革命のエピソードから始めましょう。
　フランス革命は国王の圧政に対して人々が立ち上がった。これはまずいぞと。もうちょっと自分たちの権利を認めてほしいと。

　ただ、市民が実際に権力をとってみると、今度は、その中でイデオロギー的な争いが起こったり、殺し合いが起こったりして、ギロチンでどんどん人が死んでいく。

　なぜこんなことが起こったかといえば、社会が進歩し、印刷技術の進歩で新聞が普及し、新聞が煽った一面が大きい。

　みんなが新聞を読めるようになって初めて、「Aの意見がいい」とか、「Bの意見がいい」となるのです。

　ですから、フランス革命は、ある意味、メディアの争いでもあるのです。各党派が自分の意見に近いメディアを使って煽りました。

　でも、その結果、どんどんエスカレートして、国王を殺してしまった。
　そうしたらどうなるか。
　当時のヨーロッパの国はすべて王政です。
　そうすると、各国の王様はどう思うでしょうか？

「王様を殺すようなフランスという国を放っておいたらえらいことになるぞ」

　となりませんか？

　ヨーロッパ中に「俺たちは王様でも殺すぞ」という思想が蔓延したらまずいでしょう。

　そこで、みんながよってたかってフランス革命政府を潰そうということになるのです。

　当時、フランスの王様の一族は亡命していましたから、早くブルボン王朝に戻そうと。
　革命政府のような王様を殺したやつらをのさばらせておいたらまずい、ということで、ヨーロッパ中が連合してフランスに攻めてきた。

　攻めてこられたフランスは大変です。
　大国といえども、ロシアもドイツもオーストリアも連合王国も、よってたかって四方八方から攻めてきたら生きていけない。

　でも、みんなによってたかって攻められたら、フランス国内では団結力が強まるでしょう。さすがにこれは頑張らないといけないと。

（つづく）