また、主人公のソラのほっぺが赤いのは『アルプスの少女ハイジ』の、レイのほっぺに横線が引いてあるのは『巨人の星』の星飛雄馬のオマージュですね。そして、マコプロダクションの賄いのスパゲティが超がつくほど山盛りなのは『ルパン三世 カリオストロの城』でのルパンと次元の食事シーン。さらに、なつの退職シーンで制作部長といきなりキックボクシングをするシーンがありますが、あれも『カリオストロの城』のプロレスシーンのオマージュでしょう。

 こうして、ドラマが私たち50代の視聴者の子ども時代の記憶を呼び覚ましてくれるのは、嬉しい限りです。

アニメ黎明期のビジネスモデルが
後々まで業界にもたらした光と影

 さて、私が経済評論家として気になるのは、ドラマの中の随所に見られる、アニメーション黎明期のアニメ作品の採算に関係する部分です。この時代のアニメのビジネスモデルと採算モデルは、結果として日本のアニメにマイナスのインパクトと、そして結果として大きなプラスのインパクトをもたらしました。そんなアニメの経済史について述べてみたいと思います。

『なつぞら』はフィクションで、登場するアニメ作品は実際の人気作品を彷彿とさせるよく似た企画に置き換えられているのですが、作中で数少ないリアル作品として紹介されたのが『鉄腕アトム』です。『アトム』についてはドラマの中で、「あれがアニメといえるのか」と主要人物から批判をされるシーンが非常に印象深い形で表現されています。

 日本のアニメーターは激務にもかかわらず、まったく儲からない。その下地をつくったのが『鉄腕アトム』のビジネスモデルだったといわれています。原作者の手塚治虫氏が漫画の黒字をアニメの赤字に継ぎ込んで、トータルで採算がとれればそれでいいと考えてアニメ制作を受注したのです。このことが、その後のアニメ業界のビジネスモデルの足を引っ張ります。

 漫画が黒字の手塚治虫氏と虫プロはそれでいいかもしれませんが、東映アニメーションなど競合するアニメ会社にとっては、それでは採算は厳しくなるわけです。それでもコストリーダーの虫プロが存在する以上、他社がより高値で作品制作を受注できるわけではない。ここで、当時のアニメ業界が構造不況業種になる仕組みができ上がってしまいました。