人手不足による労働市場の「超売り手市場化」や業界全体の構造不況化などによって、企業間だけでなく業種間にも給料格差がある。そこで、戦後最長記録を更新したとみられる景気拡大期において、「初任給」の上昇率に業種間でどんな差が出たのかを探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)

業種ごとの「給料格差」を
統計データで浮き彫りにする

 就職や転職など、仕事を選ぶ上で給料は多くの人にとって意思決定における重要な要素の一つだろう。その給料の水準や伸び率は企業ごとに千差万別だが、「業種」というくくりで見たときに大きなトレンドがあることも事実だ。

 特に最近は、人口減少に端を発する人手不足によって就職・転職活動が求職者優位の「超売り手市場」と化していたり、その対応策として人工知能(AI)やITツール、機械などによる自動化を進めていたりする。また、金融業界など構造不況に陥っているとされる業種もある。

 こうした事情や取り組みには業種によって濃淡があり、そのことが業種ごとの給料格差という大きなトレンドとして表れるのだ。

 そこで今回ダイヤモンド編集部では、戦後最長記録を更新したとみられる、2012年12月から始まった景気拡大期での「初任給」の上昇率を業種ごとに算出。ランキングを作成した。

 どんな業種で働く人が景気拡大の恩恵を受けることができたのか、ランキングを見ていこう。

人生初の給料「初任給」で
分かれる勝ち組・負け組

 12年と18年の初任給を業種ごとに比較し、その上昇率でランキングしたのが、「初任給の業種別上昇ランキング」だ。

初任給の業種別上昇率ランキング*順位は小数第2位を加味している。「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)を基にダイヤモンド編集部作成 拡大画像表示

 すると、上昇率1位となったのは「建設」。19万8300円から21万4600円に8.2%アップした。11年に発生した東日本大震災の復興需要に続き、20年に開催される東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件が舞い込むなど、この数年は市場が沸き立っていた。

 ただ、仕事はたくさんあるが人手が足りず、人材確保が建設会社の大きな経営課題となっている。「建設」が初任給の上昇率で1位となったのは、こうした背景を映し出した結果だとみられる。

 一方、上昇率が最下位の16位となったのが、やはり人手不足がさけばれる「宿泊、飲食サービス」だ。19万7800円から19万8100円と、わずか0.2%しかアップしていない。

 同じ人手不足業種でも、初任給の上昇率においてはっきりと明暗が分かれたことが分かる結果だ。

 このように、「どんな企業」の前に「どんな業種」に自分の身を置くかは、給料を語る上で重要だということがよく分かる。

 今後は今まで以上にAIやロボットとの競争を意識せざるを得ない。今は人手不足で給料が上がっていても、そんな仕事こそ人件費と機械化投資の費用対効果をてんびんに掛ける企業が増えるはず。そういった視点も踏まえながら、自らの給料の未来を考えてみてほしい。