マツダ、メキシコ新工場に暗雲<br />ブラジル向け輸出は凍結へ世界40カ国以上と自由貿易協定を結ぶメキシコは、日系メーカーにとって最大の輸出生産拠点。日本生産方式を移植するメキシコ新工場の前途は多難だ(写真はマツダの広島県・宇品工場)

「広島に生産拠点を持つ部品サプライヤーが、徐々にメキシコ進出を決断している」(地方金融機関)

 現在、メキシコ中央部のグアナファト州では、2013年度中の操業開始に向けて、マツダ新工場の建設が急ピッチで進められている。あるマツダ幹部は、「建設プロジェクトのすべてが計画通りに進行している」と言い切る。

 近年、メキシコは世界40カ国以上と自由貿易協定を結んでいることから、自動車メーカーの“輸出生産基地”として注目を浴びている。実際に、ホンダ、日産自動車もまた、新工場建設、能力増強を目指しているところだ。

 調査会社フォーインによれば、11年のメキシコ市場は前年比10.4%増の93.8万台、同ブラジル市場は前年比3.4%増の363.3万台である。日系メーカーが、こぞってメキシコに生産拠点を置く理由は、旺盛な国内需要を獲得したいから、というだけではない。南米最大で、かつ、中米日に次ぐ世界4位のブラジル市場への輸出を念頭に置いているからだ。

 マツダは、ブラジル市場の販売方針について、当初は日本から車両を運ぶが、メキシコ工場が完成し次第、メキシコからの出荷も予定していたところだった。

 ところが、である。今年3月に、ブラジル政府が冷や水を浴びせた。メキシコからブラジルへの乗用車の輸出金額に制限がかけられることになった。制限期間は12年からの3年間。メキシコからの完成車輸入が増加していることに、自国産業を保護したいブラジルが危機感を覚えたのだ。

 困ったのはマツダである。「現時点では、メキシコからブラジルへ完成車を輸出することを視野に入れていない。ブラジルにはノックダウン(主要部品を輸入して現地で組み立てる)生産方式を検討することになるかもしれない」(マツダ幹部)と言う。