(3)年下の妻がいる夫が受け取れる「加給年金」が受け取れない

 加給年金とは、妻の厚生年金加入期間が20年未満などその他の要件を満たしたとき、妻が65歳になるまでの間、夫が受け取る年金の家族手当のようなものだ。金額は年間約39万円で、妻が5歳年下だと5年間で約200万円。これを受け取れないのは、もったいない。妻が年下なら必ず知っておきたい注意点だ。

ケースでみる!繰り下げが
「向いている人」「向いていない人」

 繰り下げをし、年金額が増えると、税金や社会保険料がアップするので、私は繰り下げ受給を積極的には推奨していない。長生きすればするほど、社会保険料の負担はますます重くなることが予想できるからだ。

 しかし実際の相談の現場では、先のデメリットや注意点を踏まえたうえで、夫婦の年齢差や、用意できた(できそうな)老後資金の金額、年金額、65歳以降の収入の目途などを考慮し、その人に向けて「繰り下げるべきか、しないほうがいいのか」をアドバイスしている。

「繰り下げに向いている人」「向いていない人」をケースで見てみよう。

【ケース1】妻は専業主婦期間が長く、年金額は基礎年金+α程度と少ない。
→繰り下げが向いている

 理由は、年金額が少ない人は、繰り下げしても税金や社会保険料の負担が増えないケースが多いから。

 基礎年金は保険料を40年間払い込み、満額で約78万円だ。一方、65歳からの公的年金等控除額(年金の非課税枠)は最低120万円。つまり、120万円までの公的年金(企業年金やiDeCoなど確定拠出型年金も含む)収入なら、非課税ということ。

 仮に妻の年金額が少しの厚生年金と合わせて80万円だとすると、5年間繰り下げると42%アップの約114万円。この額なら公的年金等控除額の範囲内で所得金額はゼロとなる。

 厚生年金の期間がもう少しあり、年金が90万円なら42%アップ後は約128万円。公的年金等控除額の120万円を超えるが、基礎控除の38万円を差し引くと、結果として所得金額はゼロとなるので、税金もかからないし、社会保険料の計算に大きな影響は与えない(個人年金など他の収入はない前提)。

 一般に女性のほうが長生きの傾向にあるため、損益分岐年齢を超えて年金を受け取る確率が高い。女性は繰り下げ受給に向いているといえる。