日航機墜落事故を取り上げた山崎豊子氏原作の大ベストセラー小説『沈まぬ太陽』の劇場用映画が年明けにクランクインする。

  角川映画(旧・角川ヘラルド映画)は2006年に新作ラインアップとして同作品の映画化を発表。撮影に入らないまま「2008年夏公開」という当初のスケジュールは過ぎ、「やはり頓挫した」とささやかれていたが、噂を覆して年内にも正式に製作発表を行う。

 原作は日本航空(JAL)をモデルに、1985年に群馬県御巣鷹山で起きた航空機墜落事故、航空会社の労使対立、政官財を巻き込んだ組織の腐敗が描かれている。労働組合委員長を務めた航空会社社員を主人公として1994年から「週刊新潮」で連載され、物議を醸した。

  一企業のイメージを大きく損なう可能性が強く、JALはもちろん他の航空会社からも撮影協力が得にくいことから、航空業界では映画化の実現を疑問視する声が強かった。しかし角川サイドは極秘で準備を進め、各方面の最終調整を完了した模様。山崎氏のゴーサインも出て、監督は2000年に映画「ホワイトアウト」、今年はテレビドラマ「太陽と海の教室」でヒットを飛ばした若松節朗氏、脚本は西岡琢也氏に内定した。東宝の配給で全国公開を予定する。

 航空機が必要なシーンは、航空会社の協力なしでも「コンピューター・グラフィックス(CG)で間に合わせる」(業界筋)ようだ。日航機墜落事故を舞台にした作品として、今夏に「クライマーズ・ハイ」も上映されている。

 モデルとなったJALは現在も再建途上にあり、イメージ戦略上は頭の痛い問題となるが、小説でモデルとなった政官財およびJALの実在人物の多くはすでに現役を退いている。次世代が日本の航空業界のあり方を考え、社会倫理を再確認する機会ともいえるのではないか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)