男性も育児を主としながら
月80時間までは本業で働くことの効果

 育児休業給付は、元々、失業給付をモデルにして作成されたものである。これは育児休業中には給与が支払われないため、一時的な失業状況に陥る「準失業」として雇用保険から失業給付の代わりに育児休業給付が支給される。ここで、本来の失業給付は求職活動に専念するためのものであり、受給中に何らかの仕事に就けば給付が打ち切られることが原則となる。

 しかし、その例外として、1日4時間以内で月20日間までの臨時的なアルバイトであれば容認される。これは失業してから給付が支給されるまでに一定の時間を要することや、アルバイトを経て本採用となる可能性もあるためだ。もっとも、アルバイト収入を得ている期間中は失業給付が停止されるが、その分だけ受給期間の延長という形で、全体の給付額が減らされるわけではない。

 この規定を育児休業給付にも適用すれば、育児休業中も月80時間までであれば本業で働き、それに見合った給与を受け取ることができる。その間の育児休業給付は停止されるが、その分は後払いになるため受給者の不利にはならない。子育てが夫婦の共同作業であることは当然だが、母乳の提供等、男女間の能力差は歴然と存在する。その意味では、育児休業中も育児を主としながら、その空き時間を活用して在宅勤務を含むパートタイム的な働き方を容認することが、特に男性の育児休業取得の促進には大きな効果がある。

 こうした育児休業の弾力化については、労使双方からの批判があり得る。そのなかでも大きいのが、仮に育児休業期間中の就労を容認すれば、企業がそれを悪用し、多くの仕事量を強制されることで、育児に専念するという本来の趣旨が実質的に空洞化されるという懸念である。これは、労働法とは本来、悪徳な企業から善良な労働者を保護するための規制であり、そこには抜け道はあってはならないという原理主義的な論理である。

 他方で、最低賃金等、労使の利益が正面から対立する場合と異なり、育児休業法は、子育てと仕事との両立を図る労働者を支援するための法であり、むしろ同じ職場の労働者間の助け合いの面も大きい。それ故に「職場の同僚に迷惑をかける」ことが、特に男性の育休の取得を妨げる大きな要因となっている。

 その意味では、できるだけ職場の同僚に迷惑をかけないための仕組みを考えることが、より現実的ではないだろうか。このため、育休中の就業に対する規制は、その内容を問わず、月80時間までという総量規制のみとすることが考えられる。

 また、そうした事態を最小限にするためには、例えば課長等の重要なポストについて、男女を問わず育休中の「代行(acting)課長」を定めておくことが必要である。これに任命された社員にとっては、実際の課長になる前に、実質的に課長ポストを経験する貴重な研修機会でもあり、仕事への意欲も高まるであろう。