米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO、48)は昨年、カリフォルニア州で行われたライブインタビューの際にマリフアナ(大麻)とみられるたばこ状のものを吸っていた。地球の反対側では、テスラ製自動車にバッテリーを供給している日本のパナソニックの経営幹部らが、警戒感を持ってその様子を眺めていた。
「株主がこれを知ったらどう思うのか」。そんな考えがよぎったとパナソニックの幹部の1人は振り返る。
ネバダ州の砂漠にある共同運営のバッテリー工場に何十億ドルもの投資を約束してから5年後、パナソニックとテスラとの関係は悪化していた。この「ギガファクトリー」は、利益を押し上げ、パナソニックにとっては自動車向け電子機器分野での未来を確かなものとし、テスラにとっては同社製自動車に必要な最も重要で最も高価な部品の調達を容易にするはずだった。
しかし両社の提携は、100年の歴史を持ちコンセンサス形成を基本とする日本の保守的な複合企業と、100年にわたる自動車業界の伝統を覆そうとするマスク氏の発想を基に16年前に設立されたシリコンバレーの新興企業との間で、文化の衝突を引き起こした。