私はぜんそく、鼻炎、結膜炎とさまざまなアレルギー疾患を合併していますが、こういったアレルギーの続発を「アレルギーマーチ」と呼びます。

 次から次へとアレルギーが起きてしまうアレルギーマーチは厄介なものです。このアレルギーマーチの最初のきっかけはなにかご存じでしょうか?

 話は2006年にさかのぼります。イギリスのグループが、フィラグリンという遺伝子の異常とアトピー性皮膚炎の関連を見つけて報告しました(Nat Genet 38, 441-446 ,2006)。

 フィラグリンとは、皮膚のバリアを担当するたんぱくです。垢(あか)となって落ちる部分の構成要素の一つで、フィラグリンが分解されると天然保湿因子になります。化粧品の分野ではセラミドが有名ですが、フィラグリンも皮膚の潤いにはとても重要なたんぱくです。

 このフィラグリン遺伝子に異常があるとアトピーになりやすいとの報告を受け、世界中でフィラグリンの研究がはじまりました。

 フィラグリンがおかしいと皮膚はどうなるか? 皮膚のバリアが弱くなります。

 ではバリアが弱くなると何が困るか?

 皮膚のバリアが弱まれば、外からの異物の侵入が容易となります。

 例えばダニやホコリの成分が皮膚から入ってきてしまいアレルギーを引き起こす、このことを経皮感作(けいひかんさ)と言います。

 2010年に起きた「茶のしずく石鹸(せっけん)事件」。茶のしずく石鹸(愛称)を使用した人が、小麦アレルギーを発症し、製造販売業者が自主回収することになった事件です。

 茶のしずく石鹸に含まれていた加水分解小麦「グルパール19S」が、皮膚から侵入してアレルゲンとして体に認識されました。これも経皮感作です。茶のしずく石鹸の小麦成分をアレルゲンと認識してしまった体は、次に食べ物の小麦にも反応してしまいました。つまり、小麦アレルギーを発症したのです。

 皮膚のバリアを突破して侵入してきた敵(小麦)を退治しようと体が覚えたメカニズムが、口から入ってきた敵(小麦)を同じように認識して排除しようと動きだしました。

 結果として、小麦を食べると皮膚炎が起きたり下痢をしたり、ひどい場合は咳(せき)や呼吸困難となりました。