読み応えのある本にチャレンジする

 ひとこと付け加えるなら、世の中のシステムをつくっているのはこういった「論理的思考力の高い」人たちなのだということも考えてみたいところです。そのレベルに食らいついていくか、つくられたシステムの中で漠然と過ごすのかは、みなさん次第です。

 先にも触れましたが、世の中の利便性が高まって「考える力」を使わずにすむ場面が増える中、私は世の中の全般的な知的レベルは低下傾向にあると感じています

 このことを痛感したのは、かつてある経営書を書いたときのことです。

 自分で言うのもなんですが、この本は経営書としては自分ではベストショットだという手応えがありました。しかし売れ行きは芳しくなく、おそらく5000部も売れなかったのではないかと思います。

 すると、この本の良さを見抜いた敏腕編集者の方が「この本でリベンジしませんか」と言ってくださったのです。いったいどうするのかと尋ねると、「分かりやすく書き直します」と言います。

 そして難しい部分を省き、「である」で書かれた文章を「です・ます」に変え、タイトルを変えて出し直したところ、なんと実売で17万部も売れたのでした。章立ても、項目も、文章の流れも変えていないのに、です。

 この経験から学んだのは、本は内容さえ良ければ売れるものではなく、読者が「分かる」と思えるかどうかが売れ行きを大きく左右するということです。

 先に出した本も私に言わせればさほど難しくはなかったのですが、「分かりやすさ」を打ち出しただけで30倍以上も売れるというのは、今の時代、それだけ難しい本は敬遠されるということなのでしょう。

 しかし全般的に知的レベルが低下傾向にある中だからこそ、みなさんがその水準を上げることができれば強力な武器になりえます。

 「思考力というのは持って生まれたものが大きいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、考える力は筋力と一緒で、鍛えれば必ず一定水準はアップするものです。

 「分かりやすさ」ばかりを求めず、ぜひ読み応えのある難しい本にもチャレンジしてみてください。

【行動習慣Checkリスト】
・評判が良い本の中から、読み応えのある難しい本を選ぶ
・ノーベル経済学賞受賞者・スティグリッツの『入門経済学』などにも挑戦する