墓を掘るたびに歴史が変わる

 中国では、「墓を掘るたびに歴史が変わる」といわれています。

 中国は陶磁器が有名ですが、日本でも珍重される「白磁(はくじ、真っ白な陶器)」や「青磁(せいじ、ものすごく薄いブルーの陶器)」って、わかりますか?

 日本では、白磁や青磁が珍重されます。

 白磁は、これまでは560~570年代の北斉で生まれ、青磁の製造技術とともに発展。北宋時代に白磁の名品が多くつくられるようになったと考えられてきましたが、最近はそれより300年以上さかのぼるのでは、という発見がありました。

 青磁は、漢の後期(東漢の時代)に完成したといわれています。

 この中で、「特別展『三国志』」(2019年7月9日~9月16日に東京国立博物館、2019年10月1日~2020年1月5日に九州国立博物館で開催)に行った人はいますか?

(ハイ)

 あ、いますね。

 曹操の墓に白磁が置いてあったでしょう。

 あれを見て、みんなビックリしたのです。

 北斉(550‐577)や随(581‐618)の時代より300年ぐらい前に、曹操の墓から白磁が発見された、と。

 これまで考えられていた白磁のスタート時点より300年もさかのぼるわけです。

 だから中国では、大きな墓が発掘されるたびに歴史が変わるといわれているのです。
 それは、いわばテープレコーダーが発見されるということですから、そのたびに歴史は進歩していくのです。
 永遠に真の出来事には近づけないかもしれないけれど、限りなく近似値に近づくことはできる。

 だから歴史は1つなのです。

 民族の数だけあるとか、解釈がいくつもあるというのは真っ赤なウソ。
 そんなことをいっていたら、しょせん学問ではありません。

 過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。