放射線治療と手術
どちらを選ぶべきか
――ロボット支援手術と他の治療法を比べるとどうでしょうか。
放射線治療と手術は適用(のタイミング)がかぶりますので、患者さんの意思や希望によります。前立腺がんを低リスク、中間リスク、高リスクの三つに分けると、低リスク、中間リスクでは基本的にどちらでもいい。
――ロボット支援手術でも放射線治療でも?
はい、患者の希望で。「じゃあ、どうしたらいいんですか」と聞かれれば、どちらも起こり得る合併症があることを伝えます。頻度が低くても合併症が起こったとき、後悔しないような選択をしてはどうかと。
手術後の尿失禁はほとんどの人は止まりますけど、5%ぐらいは1年たっても漏れるということがあり得る。放射線治療では尿は漏れないけど、血尿や頻尿、排尿時痛が続いたりする。
手術や放射線治療の際に起こり得る合併症を比較したQOL(人生、生活の質)調査の論文がいっぱい出ており、「排尿に関しての不満」の項目を見ると同点なんですよ。片や失禁、片や別なことで悩まされ、結局同点。なので「あなたはどちらを許容できますか」と尋ねるんです。あと放射線治療の場合は、膀胱がんなどの二次性がんを発症するケースがあるといわれていることも話します。
――性機能障害で比較すると?
小線源(放射線を出すカプセルを前立腺内に埋め込む治療法で性機能を保ちやすいとされる)と、ロボット手術で神経温存をしたケースを比べると、手術は実施した直後に落ちます。ただこれもいろいろバラつきがある。患者の年齢などを加味して論じる必要があり、神経温存ができるステージであればそんなに遜色はないですね。
――高リスクの場合は?
私は手術をお勧めします。再発を考えて。先に放射線治療や(薬による)ホルモン治療をやってしまうと、次の選択肢が限られる。だから若いほど、悪いほど手術と言っています。
――高リスクだから、逆に手術をしないという判断もありそうですが。
高リスクのがんって、手術が難しいんですよ。難しいのでやらなかったり、できなかったりする。たくさん手術をやっているところは、(難しいものも)やってますよ。
――それは技術を伴っているからということですね。
技術を伴います。どちらかというと差が出てくるのは、前立腺の形状ですけどね。高リスクがんはちゃんと取ったかどうかは別として、取ろうと思えば手術はできちゃう。リンパ節郭清(リンパ節を取り除くこと)もね。ただ、前立腺が大きいといったような場合は難しくて、ある程度の期間を経て経験を積んでいないとできないっていう領域に入りますかね。